ファイナンス 2024年1月号 No.698
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ファイナンス 2024 Jan. 20 財政制度等審議会「令和6年度予算の編成等に関する建議」についてまた、財政支出に当たっては、定量的な政策目標を明確にするとともに、その政策効果(アウトカム)を厳しく問うEBPM(証拠に基づく政策形成)を徹底していくことが重要である点も指摘している。将来に向けてより有用な施策を実行していくために、有用であっても効果が小さい既存の施策を恐れずに取り止めていくべきであり、こうしたスクラップ・アンド・ビルドの考え方を徹底することを通じて、選択と集中によるメリハリの効いた財政運営を行い、成長と分配の好循環を実現していくことが可能となるとしている。この30年間、我が国の政府支出対GDP比は諸外国と比べて顕著に増加し、さらに令和2年度以降は新型コロナへの対応から補正予算の規模を著しく拡大させた結果、平成26年度から令和5年度にかけての10年間で普通国債債務残高は300兆円近く増加し、令和5年度末には1,068兆円に達する見通しとなっているとしている。1980年代以降、金利(普通国債の利率の加重平均値)は基本的には低下してきたため、債務残高の増加にも関わらず利払費は総じて減少傾向で推移してきたが、足もとではいわゆる「金利のある世界」が再び現実のものとなりつつあると指摘している。巨額の政府債務残高を抱える中で金利が上昇すれば、利払費が急増し、市場から追加のリスク・プレミアム、すなわち国債金利の上乗せを求められることとなりかねず、そうなれば、財政運営に支障を来し、他の歳出予算を圧迫するおそれがあるほか、我が国の事業会社や金融機関などの資金調達にも悪影響を及ぼし得ると述べている。こうした事態を回避し、中長期的な財政の持続可能性に対する国際社会や市場の信認を確保していくためには、利払費が急増することによるリスクも念頭に置きながら、責任ある財政運営を行っていくことが一層重要であるとしている。令和6年度予算は、経済活動が平時化していく中で、基礎的財政収支を黒字化し、同時に債務残高対GDP比を安定的に引き下げるという財政健全化目標の達成に向けた道筋を国内外にしっかりと示し、経済・財政運営に対する市場の信認を確保するとの覚悟を持って予算編成に臨むことが求められると指摘している。物価・金利動向等我が国の経済の現況に鑑みれば、今がまさに財政健全化に軸足を移すべき時であると述べている。政府としては今回の建議を、厳粛に受け止めて令和6年度予算編成に臨んだところであり、今後の財政運営にもしっかりと活かしてまいりたい。

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