ファイナンス 2024年1月号 No.698
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(十倉会長から鈴木財務大臣への建議手交。左から、吉川洋委員、武田洋子委員、土居丈朗委員、十倉雅和会長、鈴木俊一財務大臣、増田寛也会長代理、河村小百合委員、中空麻奈委員。)一方、コロナ禍から経済が回復してきたことに伴い、労働市場ではコロナ禍直前と同様に人手不足が顕在化していると指摘している。今後とも労働供給上の制約に直面していく可能性が高いことを踏まえれば、人への投資、DX化、省力化などの一層の推進等を通じて、諸外国と比べて低い伸びに止まっている我が国の一人当たり労働生産性の向上を図っていくことが急務であるとしている。IMFは、本年4月に公表した財政に関するレポート「Fiscal Monitor」の中で、先進国の財政政策に関し、「最近の危機は、財政政策が強靱性を促進する強力なツールであることを示した。しかし、そのためには、各国政府は財政余力の再構築に、より重点を置くことが必要になる。」等と提言している。主要先進国は、こうした認識を共有し、経済の平時化に伴い財政健全化に向けた取組を進めていると指摘している。こうした取組を通じ、各国の基礎的財政収支対GDP比はコロナ禍以降着実に改善しつつあると述べている。我が国の足もとの経済状況等を踏まえ、「「経済財政運営と改革の基本方針2023」(令和5年6月16日閣議決定)」に基づき歳出構造を平時に戻し、財政を健全化していくことは当然としている。物価高や供給力強化といった課題への対応は必要であるが、現在の経済情勢の下でそうした課題に対応していくためには、真に必要で効果的な施策に的を絞って講じていくことが必要であり、単に現状維持志向の政策を講じるのではなく、将来を見据えた財政措置を制度改革や規制緩和とあわせて講じることにより、企業や個人の行動変容や産業の新陳代謝などを促し、民需主導の自律的な経済成長を実現していくことが望ましいと述べている。(1)国際的な認識と諸外国の状況2.経済・財政運営の在り方(2) 民間主導の経済と財政運営に対する信認の確保 19 ファイナンス 2024 Jan.

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