ファイナンス 2024年1月号 No.698
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主計局調査課長 横山 好古/課長補佐 竹内 雅彦 當間 和幸調査第一係長 梶 颯人/同調査主任 砂田 恭希/同係員 髙木 雄太郎 原 由姫乃ファイナンス 2024 Jan. 18 財政制度等審議会・財政制度分科会は、2023年9月から8回にわたって審議を行い、「令和6年度予算の編成等に関する建議」をとりまとめ、11月20日に鈴木財務大臣に手交した。本建議では、令和6年度予算編成の指針となるものとして、総論に加え、社会保障、地方財政をはじめとする10の歳出分野における具体的な課題と方向性、国家公務員等の旅費制度の改正の方向性が示されている。詳しい内容は建議本文をご覧いただくこととし、ここでは、特に財政総論の中でポイントとなる点をご紹介したい。まず、冒頭において、我が国の足もとの経済状況等に鑑みれば、物価高等の足もとの課題への対応は必要とはいえ、経済が平時化する中にあって、既定の政府の方針に従って歳出構造を平時に戻し、財政を健全化していくことは当然のことであるとしている。その際、単に現状維持志向の政策を講じるのではなく、将来を見据えた財政措置を制度改革や規制緩和とあわせて講じることで、企業や個人の行動変容や産業の新陳代謝等を促すとともに、労働生産性の伸びを確保し、民需主導の自律的・持続的な経済成長を実現できる環境を整えていくことが政府の重要な役割であると述べている。また、財政や社会保障はもとより国家の運営に当たっては、将来世代の利益にもつながる対応を選択し、持続可能な社会・経済を未来に残していかねばならないと指摘している。令和6年度(2024年度)予算については、こうした基本認識を踏まえ、また国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化目標の期限は令和7年度に迫っている中で、財政健全化目標の達成に向けた道筋をしっかりと示し、経済・財政運営に対する市場の信認を確保するとの覚悟を持って編成に臨むことが求められるとしている。この一年間を振り返ると、新型コロナに伴う制限が順次緩和・撤廃され、本年5月にはその位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類感染症に変更された。こうした中、我が国の経済情勢は平時に戻り、さらに一部ではコロナ禍以前の水準を超えて経済活動が活性化していると述べている。個人消費や民間設備投資の回復により、内閣府が本年7月に公表した年央試算によれば、令和5年度の名目GDPは587兆円と過去最高を更新する見込みであり、実質GDPもコロナ禍以前の水準を回復する見通しとなっていると指摘している。本年春の建議で、グローバルな経済・金融環境は大きく変化しており、これまで続いてきた低インフレ・低金利基調から高インフレ・金利上昇基調へと経済の潮目が変わっていることを指摘したが、足もとでもその傾向に変化はないとしている。物価動向を見ても、欧米では令和4年末ほどではないにせよ、依然としてインフレが継続しており、物価上昇やこれに対応するための金融引締め等の影響も相まって長期金利も上昇している点を指摘している。我が国の物価も、その主たる要因がエネルギーから生鮮食品を除く食料等に変化しているにせよ、依然として上昇傾向にある点、また、金利は長期債・超長期債を中心に一層上昇傾向にあり、10年債の利回りは、11月1日の終値で0.955%と、11年7か月ぶりの水準となった点を指摘している。このような状況を踏まえると、今後は我が国においても物価高や金利上昇が常態化する局面に入っていくことも想定され、それによる経済・財政への影響についても十分留意が必要であると述べている。(2)経済の潮目の変化1.経済・市場動向(1)平時に戻った経済財政制度等審議会 「令和6年度予算の編成等に関する 建議」について

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