ファイナンス 2023 Dec. 75航路(地図提供:Map-It)市が約30年ぶりに建造した汽船「瀬戸ブルー」(写真提供:江田島市)今年5月に、市が所有する旅客船が約30年ぶりに更新されました。更新にあたっては安全性を第一にしつつ、顧客利便性向上の観点から、高齢者等に配慮して客室がバリアフリー化されているほか、客席をやや外向けに配置することで、穏やかな瀬戸内海の景色が楽しめるよう観光面にも配慮されています。この新しい旅客船は、親しみを持ってもらい利用促進を図る主旨から、一般公募で船名を募集し、「瀬戸ブルー」と名付けられました。昨今、地方の公共交通は、人口減少や自家用車の利用増加などから利用者が減少傾向にあり、交通事業者の経営環境は厳しさを増しています。こうしたなかで、新造船は、最大定員数を抑えた代わりに、利便性向上やサービス拡充の工夫がなされており、これまで以上に、多くの方々に親しまれるのではないかと期待しています。4. 定住人口・交流人口の増加に向けて全国的に少子高齢化、人口減少が進むなか、江田島市においても人口減少に歯止めをかけるため、子育てしやすい環境づくりなどの定住促進や、企業誘致や空き家を活用した住宅確保支援などによる移住促進に取り組まれています。こうしたなか、令和5年6月に、市が誘致した水産加工事業者の牡蠣加工品工場が開業しました。新工場では、地元出身者を中心に35人が雇用され、令和6年1月までにさらに30人の採用が予定されており、地域の雇用拡大にも大きく寄与しています。さらに、新工場では見学者の受け入れを行うほか、牡蠣をその場で楽しめるオイスターカフェ、BBQ広場が併設され、牡蠣の産地としての観光振興も期待されています。また、島内の空き家を活用したサテライトオフィス等の誘致にも積極的に取り組まれています。豊かな自然の中で仕事のできる環境を強みとしてアピールするとともに、サテライトオフィス開設等に係る経費の一部を助成するなどのサポートを行い、企業や人の呼び込みを行っています。江田島市の令和4年度の移住者数は、34世帯73人で、過去最多だった令和3年度(22世帯47人)をさらに更新しているそうです。江田島市のまちづくりの取り組みに対する成果の一端と言えるのではないでしょうか。このほかにも、海上交通と陸上交通の一体的な公共交通を構築するための公共交通協議会の運営費や、通学者の定期券補助制度の財源などにも財政融資資金が活用されています。財務局では、こうした地域の実情や地方公共団体のニーズを把握しつつ、財政融資資金の活用により、地域活性化の取り組みが一層進展するよう、引き続き力添えしていきたいと思っています。5.おわりに今回ご紹介した新造船「瀬戸ブルー」の建造費やサテライトオフィス等誘致促進事業補助制度の資金に財政融資資金が活用されています。江田島市
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