ファイナンス 2023年12月号 No.697
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埼玉県杉戸町総合政策課 財政担当 主任藥袋 秀明 ファイナンス 2023 Dec. 69choinaca(ちょいなか)合同会社 矢口さんまた、少子高齢化による税収の減少、社会保障経費の増加など、町行政を取り巻く環境はより厳しさを増すものと考えられ、新たなアプローチが求められています。そこで当町は、地域のプレーヤー・地域の担い手・行政がタッグを組み、「みんなが主役になれる舞台=圧倒的ホームタウン」をキャッチフレーズに地域の活性化に取り組んでいます。本稿では、当町が進める新たな取り組みに焦点を当て、その実践例の一部を紹介します。1.はじめに杉戸町は、埼玉県東部に位置し、旧日光街道の宿場町として、400年を超える歴史を持つ、水と緑の自然に恵まれた懐かしい田園風景のあるまちです。当町はベッドタウンとして発展を遂げてきましたが、2000年をピークに人口は減少傾向にあり、地域の活力の喪失と地域経済の衰退が課題となっています。2.活躍する地域のプレーヤー当町のプレーヤーの代表は、元町有施設をリノベーションした「ひとつ屋根の下」を拠点に、ひととまちをつなぐアクションを展開する女性ユニット「choinaca(ちょいなか)合同会社」です。“ちょっと田舎”で小さく愉たのしい自立の形を提案し、起業をめざすひとと地域の発展をつないでいます。自分が本当にやりたいことや得意なことを活かしながら、楽しく月に3万円稼ぐスモールビジネス「3ビズ」を提唱し、自分にも周りにも地域にもうれしい仕事を生み出す講座を実施しています。「3ビズ」は卒業生が約300人を超え、卒業後も切磋琢磨しながら活動するなど、地域に活力と経済循環を生みだしています。さらにその取組は、群馬県、静岡県、長野県など、全国的に広がりつつあります。その他にも「321の市(さんにいちのいち)」などのさまざまなイベントやワークショップを開催し、老若男女が笑顔で集うコミュニティを構築しています。3.新たな担い手の誕生当町が令和3・4年度に開催した「リノベーションスクール」をきっかけに地域の担い手が誕生しています。「リノベーションスクール」とは、町内に実在する遊休不動産を題材に、エリアの魅力や価値を高めるビジネスプランを作り出す実践型ワークショップです。その目的は、商業的に力のある店舗を誘致して「建物」をリノベーションすることではなく、ひとつの不動産とコミュニティの再生を通じて、「エリア」をリノベーションすることです。同スクールを契機として、次の3件が事業化されています。だれもが主役になれる まちづくり。ベッドタウンから圧倒的ホームタウンへ杉戸町

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