欧州東アジア北アメリカロシア・中央アジア南・東南アジアサブサハラアフリカ中東・ラテンアメリカ北アフリカ60%50%40%30%20%10%0%図3:所得の不平等:地域間比較(2021年)70%Bottom 50%Middle 40%Top 10%Top 1%出所:World Inequality Databaseより筆者作成出所: 日本以外の国の数値はWorld Inequality Databaseより筆者作成。日本の数値はMikayama et al.(2023)より引用。ドイツカナダ18.6%43.6%37.8%13.3%16.3%44.1%39.7%13.9%18.8%43.8%37.5%13.1%16.3%44.1%39.7%13.9%出所:World Inequality Databaseより筆者作成アメリカ日本13.8%40.6%45.6%19.0%13.6%40.7%45.7%19.1%14.7%51.5%33.8%8.4%50%40%30%20%10%20212019図2:世界全体で捉えた所得の不平等(2021年)60%表2:所得の不平等:国家間比較(2019年および2021年)イタリア39%8%0%Bottom 50%Middle 40%フランスBottom 50%Middle 40%Top 10%Top 1%23.2%45.7%31.2%9.0%Bottom 50%Middle 40%Top 10%Top 1%22.6%44.9%32.4%10.0%53%20%Top 10%Top 1%イギリス20.3%43.9%35.8%12.7%16.6%46.4%37.0%12.2%20.3%43.9%35.8%12.7%16.5%46.2%37.3%12.4%相対的に所得シェアが低く、これに対してカナダやアメリカは相対的に所得シェアが高くなっています。特にアメリカに注目すると、Top 10%の人々が稼得する所得は国全体の中の45.6%であり、半分近くを占めています。また、Top 1%の人々が稼得する所得は国全体の中の19.0%であり、上位層における所得集中の度合いは世界全体で捉えた状況に近く、また比較的高いと言えます。なお、日本における所得の不平等度については、近年の計測結果は、利用可能なデータに制約があることから、信頼度の高いかたちでは更新・発表されていません。こうした中、Mikayama et al.(2023)は利用可能な最新の統計調査データや税務データを用い、DINAガイドラインに沿って日本の所得分布を計測しました。具体的には総務省統計局『全国家計構造調査』(旧『全国消費実態調査』)の個票データを活用して、2014年時点と2019年時点の所得シェアを報告しています。2019年の結果によれば、日本のTop 1%の人々が稼得する所得は国全体の中の8.4%を占めており、これをWorld Inequality Databaseの数値と比較すると、G7の中で最も低い水準です(表2)。Top 10%の人々が稼得する所得は国全体の中の33.8%となり、フランスよりも大きいですが、イギリスよりも小さい状況です。日本に関しては、World Inequality Reportにおいて、十分なデータを用いた推計が行われておらず、過去からの所得分布の推移に関しては、Moriguchi and Saez(2008)における推計の結果を参照する必要があります。この研究では、主に税務データ(『申告所得税標本調査』と『民間給与実態統計調査』)が使用されており、1886年から2005年までの長期間にわ4.おわりにこれまで述べてきたように、DINA(Distributional National Accounts)は、国際的に比較可能な所得・資産の分布を推計することを目的として、所得・資産の概念に関する定義や計測方法を提示しています。また、World Inequality ReportではこのDINAガイドラインで提示される統一的な手法にしたがって、主要国における所得・資産の不平等の度合いが公表され、そこでは上位層の集中度を示す上位所得シェア(例えばトップ1%やトップ10%の所得シェアなど)などが示されています。 60 ファイナンス 2023 Dec.
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