プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦仙台市出身、1993年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06年)出向等を経て2008年から大和総研。主著に「公民連携パークマネジメント:人を集め都市の価値を高める仕組み」(学芸出版社) ファイナンス 2023 Dec. 55図4 姫路駅北駅前広場から大手前通りを望むには御幸通に「みゆき通り店」を出店した。多店舗展開は昭和54年(1979)8月に西松屋チエーンに商号を変更した頃から本格化した。ただ、みゆき通り商店街を歩いてみると相当程度の賑やかさを保っているように見受けられる。西松屋、メガネの三城総本店の他、戦前から営業している和菓子の老舗も健在だ。新しい店もあり空き店舗は目立たない。考えられるのは中心商店街を支える住民がいることだ。中心市街地の居住人口は堅調に推移しており、平成21年(2009)3月末からの14年間で約3割トランジットモール化した駅前大通平成に入ると郊外大型店の出店が相次いだ。平成5年(1993)11月、核店舗がジャスコの姫路リバーシティーが西日本最大の規模をうたって開店。翌年、西友系のザ・モール姫路がオープンした。さらに6年後の平成12年(2000)にはイトーヨーカドー広畑店が出店する。郊外大型店の影響で中心街の客足が遠のいた。元のダイエーのトポスは平成11年(1999)6月に閉店。御幸通のダイエー姫路店も平成14年(2002)1月に閉店した。ジャスコ姫路店は平成6年(1994)にファッションビルのフォーラスに転換し営業を続けてきたが、平成28年(2016)1月に閉店。跡地はダイワロイネットホテルと15階建のマンションになった。商店街の空き店舗に路面店を出店するなど街の賑わいを維持すべく努力していたヤマトヤシキ姫路店だが平成30年(2018)に閉店となった。跡地には16階建と11階建のマンションが建つ予定である。大手前通りから姫路城を真正面に臨む位置には眺望デッキ「キャッスルビュー」ができた。図4はキャッスルビューから撮影した大手前通りの眺望である。令和2年3月、トランジットモールの北側から姫路城までの大手前通りがリニューアルされた。歩行者利便増進道路制度(通称「ほこみち」)の適用第1号である。令和4年には、「姫路市ウォーカブル推進計画」が「まちづくりアワード」の第1回で最高賞(国土交通大臣賞)を受賞した。大手前通りとその周辺のまちづくりはウォーカブルシティの未来像を示している。伸びた。かつての商業地にマンションが建ち、中心街の辺縁から住まう街として再生していることがうかがえる。姫路市が目指している、歩いて快適なウォーカブルシティの象徴が姫路駅北駅前広場である。平成20年(2008)12月、駅と周辺路線の20年に及ぶ高架化工事が完了した。地上路線の南側に高架線を敷設したため、駅の北側に空きスペースができた。これに伴う再開発プロジェクトが「キャスティ21」である。その1つとして姫路駅北駅前広場が平成27年(2015)3月に完成した。旧駅ビルが撤去され、城の外堀をイメージした半地下の庭園「キャッスルガーデン」が整備された。その前面は芝生広場となった。同年4月には駅前の大手前通りが「トランジットモール」となり路線バス・タクシーを除く車両の乗り入れが禁止された。車道と歩道の割合が逆転し、整備前は車道6車線32m、歩道18mだったのが整備後は車道2車線16m、歩道34mとなった。駅前広場の東西に一般車乗降場が設けられ、その内側には車が入ってこれなくなった。トランジットモール化した大手前通りと公園化された駅前広場は歩行者中心の空間となり、鉄道や路線バス、タクシーなど公共交通機関の乗り換え拠点となった。
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