注:GPIFは2022年12月末時点、CalPERSは2022年6月末時点、1ドル=135.7円 換算(出所) 内閣府 イノベーション・エコシステム専門調査会「スタートアップ支援について」、厚生労働省年金財政における経済前提に関する専門委員会「GPIFおよび諸外国の年金基金等の運用利回りの国際比較」、内閣府 大学ファンド資金運用WG「国内外の資金運用事例」、金融庁 事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するWG「事務局説明資料」、日本政策金融公庫「起業と起業意識に関する調査」ファミリーオフィス, 3%政府機関, 3%その他, 6%保険会社, 9%事業会社, 11%大学基金, 10%公的年金, 13%日本企業年金, 2%財団、大学基金, 3%政府機関, 3%保険会社, 6%投資銀行等, 9% 事業会社, 38%• 機関投資家からの資金供給が進んでお資金量の不足らず、ファンドサイズが小さい。• 海外からのリスクマネー供給が限定的。• Exit(出口戦略)の選択肢・機会が限定的(M&Aが少なくIPO偏重のExit)。流動性の不足• 非上場株式の流通・取引が僅少。(図表17)年金基金の運用先CalPERS年金積立金管理運用カリフォルニア州職員独立行政法人その他1.1%国内債券25.5%外国株式24.5%運用資産189兆円PE12.0%国内株式25.3%外国債券24.8%・米国では長期運用を指向するアセットオーナー(財団、年金基金、大学基金等)によるLP投資がVCに対する投資の約65%を占めており、ファンドサイズの拡大に貢献している(図表11)。・非上場株式を取引するセカンダリー市場が成熟しており、スタートアップの起業家やVCは、当該市場を通じた株式売却など、IPOに限られない多様なExit手段を確保することが可能となっている(図表12)。・米国VCの動向をExit件数・金額別にみてみると、件数ではM&AよるExitが大宗を占めており、金額ではIPOによるExitが株式市況等を背景に2021年にかけて大きく伸長したことが確認できる(図表13)。金融市場の量的な裏付けによりExitの蓋然性が投資家に意識され、レイタ―期のVC投資を活性化させている可能性がある(図表14)。・エクイティによる資金調達のほか、米国ではスタートアップの企業価値の1~2割程度をベンチャーキャピタルや銀行が融資などデット性の資金で提供するベンチャーデットという仕組みが普及し、エクイティによる資金調達の補完機能を担っている(図表15)。・本邦スタートアップの課題として、機関投資家からの資金供給が進んでいないことやExitの選択肢・機会が限定的であることなどの資金調達面での課題が指摘されており、スタートアップに対する資金供給の量的な補完については、GPIF等の年金基金や大学ファンドの活用が期待されている(図表16)。・日米で年金基金の投資先を比較すると、米国は債券投資の割合が低く、未上場株式を含む株式投資や、実物資産を含むオルタナティブ投資の割合が高い(図表17)。本邦の大学ファンドについては、2022年3月より運用を開始したところであり、運用成果の還元を通じ、研究基盤の構築を長期的・安定的に支援していくことが期待される(図表18)。・不動産担保や経営者保証に依存しない新しい担保制度として、事業成長担保権に関する検討も進められている(図表19)。・金融市場からスタートアップに対する円滑な資金供給がなされることを通じて、イノベーションの源泉となる起業マインドの向上や、起業家が抱えるリスクが過度なものとならないよう、適切なリスクシェアの仕組みを実現していくことが望まれる(図表20、21)。米国GPIF(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。銀行, 3%財団, 23%LP出資企業年金, 19%公的年金, 1%(件)1,600銀行, 38%1,200800400注:2021年時点2016退職年金基金債券実物資産26.7%15.8%運用資産59兆円グローバル株式担保44.4%事業全体技術力やキャッシュフロー、動産、のれん などリターン目標6.9%+HEPI運用資産資産構成年間収益率(実績)注1:2022年度実績注2:HEPI…高等教育関連物価指数(Higher Education Price Index)(図表19)事業成長担保権の概要アセットオーナー企業YaleStanfordOxford5%+CPI0.6兆円7.6%+HEPI3.4兆円3.3兆円上場株式 14%未上場株式 18%VC投資 24%その他 44%上場株式 25%未上場株式 30%その他 45%上場株式 53%未上場株式 23%その他 24%8.1%9.9%9.6%リターン現金化VC投資リターン20172018201920202021融資事業成長担保権制度の主な概要▼担保となる財産の範囲動産や知的財産権、のれんなどの総財産▼担保権を設定できる事業者の範囲会社法上の株式会社や合同会社▼担保権者専用の免許を取得した信託会社▼担保権設定の前提会社と担保権者が信託契約を結ぶ▼対抗要件商業登記簿への登記で設定状況を示す金額の推移M&A件数IPO件数M&AによるExit額(右軸)IPOによるExit額(右軸)セカンダリー市場VCスタートアップ企業/起業家銀行大学ファンド(日本)3%+ 長期物価上昇率9.9兆円海外債券 54.6%海外株式 17.2%その他 28.2%▲2.2%注:「はい」と回答した成人人口の割合注:まだ起業していない理由として、「失敗したときのリスクが大きい」と回答 した人を対象としている。(億ドル)2,5002,0001,5001,0005000エンジェル/シードアーリーレイター株式売却20192020(10億ドル)800(億ドル)350300250200150100500600400200202200 20122013201420152016201720182019202020212022(出所) 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 第3回 イノベーション・エコシステム専門調査会「スタートアップ・エコシステムの現状と課題(事務局提出資料)」、NVCA Pitchbook「Venture Monitor Summary 2023 Q3」、「Venture Monitor Q4 2022」、一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2022」、Pitch Bookスタートアップ育成の課題と金融市場の確立に向けて日本米国起業に成功すれば社会的地位が得られる安定した収入を失うこと事業に投下した資金を失うこと家族に迷惑をかけること借金や個人保証を抱えること再就職が困難であること信用を失うこと202120222023H1周囲に起業家がいる(%)周囲に起業に有利な機会がある起業するために必要な知識、能力、経験がある(%)62.361.857.755.729.426.358.820.080.462.411.712.363.224.064.576.2起業することが望ましい(図表14)米国におけるステージ別 (図表15)ベンチャーデットの調達額推移 (図表20)起業マインドの日米比較(図表21)起業時のリスクコラム 経済トレンド 114VC投資額ファイナンス 2023 Dec. 51(図表11)VC向けLP投資主体の構成比(図表16)資金調達における課題(図表12)米国セカンダリー市場の概要(図表13)米国におけるExit件数・ (図表18)大学ファンドの国際比較(米国)米国におけるスタートアップ金融市場
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