ファイナンス 2023年12月号 No.697
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(%)1.81.61.41.210.80.60.40.202003/5/1(出所)財務省2003/6/1ト・リスク)ショックを想起させる」と指摘しています。〈2003年の金利上昇〉2003/7/12003/8/12003/9/1(%)0.90.80.70.60.50.40.32013/3/112013/4/12013/5/1〈2013年の金利上昇〉2013/6/1*10) 例えば、岩田(2013)では2013年4月以降の金利上昇について「今回の国債金利の上昇は、03年6月から8月にかけてのVaR(バリュー・アッ*11) QQE発表直後の金利上昇については、2013年4月26日の金融政策決定会合にて、青木周平金融市場局長(当時)は、「中期ゾーンの金利上昇については、当預付利金利の引き下げ観測が消えていったことに伴い、付利金利と整合的な水準に戻る動きという面もあるが、金融緩和の枠組み変更に伴い、短期国債の買入目標残高が示されなくなったことなどから、日銀の短期金利安定に対するコミットメントが弱まったのではないかといった見方が一部でみられたことも影響しているように窺われる。実際、5年債レートは一時0.30%を超える水準までややオーバーシュート気味に上昇した。一方で、超長期ゾーンについては、2月以降思い切った金融緩和に対する期待から急速に低下した金利が、材料出尽くし感から反転したという点に加え、このゾーンの買入額が事前の市場予想を大きく上回るものであったため、金利水準に対する見方が定まらない中で市場流動性が低下し、ボラティリティが拡大したと考えられる」(p.4-5)と整理しています。*12) 2013年5月の中頃の金利上昇については、2013年5月21日の金融政策決定会合にて、山岡浩巳金融市場局長(当時)は「5月中旬以降の長期金利の上昇は、世界的な経済見通しの好転、投資家のリスクアペタイトの回復、このもとでの世界的な金利上昇や株高といったことを背景としており、わが国については、これに円安の進行も加わったという姿であると整理できる」(p.4)と整理しています。また、世界各国における長期金利上昇については、「各国の長期金利であるが、5月中旬以降、米国、欧州、日本の先進各国でかなり速いテンポで■って上昇傾向を■っている。この背景としては、米国の雇用指標など幾つかの好調な経済指標の発表を受け、米国を中心に経済見通しが上振れ、米国のバーナンキ議長等によって資産買入政策からの早期エグジットを巡る発言が行われたことが材料視されている」(p.3)としています。図表4 金利上昇ショック:2003年と2013年の比較(2015)では、その著書の序盤で、英国ロンドンにあるミレニアム・ブリッジにおいて、人々がバラバラな歩き方をする限り橋が安定するものの、人々が同じ動きをすることにより橋の振動が大きくなるという事例が紹介されています。この事例はVaRショックに近い現象とも解され、シン(2015)ではその後、金融システムに関する議論を展開していくため、関心がある読者は同書を参照してください。前節ではVaRショックの概要について説明しましたが、本節ではもう少し詳細にVaRショックについて考えていきます。筆者の理解では、VaRショックの契機は、大手行による金融資産売却に伴い、金利上昇を招いたというものです。これをデータで確認してみましょう。図表5は、都市銀行、第一地銀、第二地銀の保有する国債残高の変化額になりますが、2003年6月、8月、9月に大手行は国債の残高を減らしていることがわかります(一方、それまでは国債の残高を増やしていたことも確認できます)。一方、地銀の国債保有についてはほとんど変化がないということも確認できます。大手行は国債の残高だけでなく、金利リスクも低下BOX 1 2013年の金利上昇筆者の理解では、2013年4月の金利上昇はVaRショックとの類似性で議論が展開されました*10。円金利市場では、量的・質的金融緩和(QQE)が発表されて以降、急激な金利上昇を経験しました。図表4の右図は10年金利の推移ですが、2013年4月から6月にかけて、0.4%程度から0.9%程度まで上昇していることがわかります。2013年4月における金利上昇時も、VaRが上昇したことからポジションを落とした投資家が少なくなかったことに加え、金利上昇のタイミングが二回あったという点も類似しています。前述のとおり、VaRショックでは計2回の金利上昇があったのですが、2013年についても、4月にQQEがアナウンスされた直後に金利上昇した後*11、一定の期間をおいて5月に再度金利が急上昇しています*12。VaRショックと2013年4月の金利上昇は、日銀がシグナル・オペを打ったという点でも共通していますが、この点は3.3節を参照してください。3.VaRショックにおける詳細3.1 大手銀行による売却*10*11*12 18 ファイナンス 2023 Dec.

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