ファイナンス 2023年11月号 No.696
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)徴(3収 (4)徴収共助要請(1)課税(6)送金(5)徴収(2)財産移転二国間ミーティングの様子徴収共助の仕組みA国A国当局納税者B国当局B国ファイナンス 2023 Nov. 3徴収逃れを狙った資産の 海外移転が国際的課題に徴収共助制度とは、条約締結国間で租税債権の徴収につき相互に協力し合う制度である。平成22年11月に税制調査会専門家委員会でとりまとめられた『国際課税に関する論点整理』において、「外国との間で租税債権につき徴収の共助を行うことのできる仕組みを整える必要がある」とされ、本格的に税の徴収に関する執行協力の議論が開始。平成23年に欧州評議会・OECD税務行政執行共助条約(以下、「税務行政執行共助条約」)への加盟(平成25年発効)を果たし、我が国も国際的な徴収共助実施に舵を切った。以前から納税者が課税された税金の徴収を免れる行為(いわゆる徴収逃れあるいは徴収回避行為)への対応が国際的に議論されてきた。つまり、当局からの徴収を回避するために、納税者が国外へ資産を移転させることにどう対応していくかが議論の対象となっていた。問題はどこにあるのか。まず、滞納者が当局からの追及を免れるために外国に財産を逃避させたとしても、この外国の財産に対して滞納処分を執行できるのであれば、当局にとって支障はない。しかしながらそのような執行は難しい。なぜなら、執行管轄権の制約によって、外国での公権力の行使は国際法上禁止されるからだ。滞納処分のような税の徴収は公権力の行使そのものであり、外国の財産を直接差し押さえることはできないのである。他方で、経済社会のグローバル化が進んできている。納税者は、税の滞納があったとしても自己の財産を自由に処分できるから、海外に資金を送金し、外国で株式や不動産などの資産を形成して、当局の差押えを免れるような行為が、益々容易になってきている。日本は、平成23年11月に開かれたG20カンヌサミットにおいて、税務行政執行共助条約に署名した。税務行政執行共助条約には、主に3類型の行政支援が掲げられている。それは(1)情報交換、(2)徴収共助、(3)送達共助だ。当該条約が徴収共助の枠組みを示した。国際的な徴収逃れに対するそれまでの議論に対して、一定の取組が多国間で進められることになったのである。このような多国間協力の税務執行の枠組みにはより多くの国が参加することが望まれていた。日本もこの多国間協力の枠組みにコミットしていく形となった。G20カンヌサミットで 税務行政執行共助条約に署名このような事情から、徴収逃れを目的に納税者が国外へ資産を移転させることについては、国際的に一定の対策が必要となっていた。徴収共助制度の概要国際的な徴収逃れを防止するため 平成23年に多国間協力の枠組みにコミット

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