ファイナンス 2023年11月号 No.696
42/72

(出所)金融広報中央委員会「金融リテラシー調査2022年」、FINRA「The State of U.S. Financial Capability:The 2018 National Financial Capability Study」(%)・2001年以来、「貯蓄から投資へ」のスローガンが掲げられてきたが、日本の家計における現金・預金の保有比率は依然高止まり、リスク資産保有比率は低位で推移し、これまで「貯蓄から投資へ」の大きな動きは観測されていない(図表1・2)。・日米欧の家計の金融資産構成(2023年3月末時点)をみても、リスク資産である株式・投資信託の保有比率は、米欧それぞれに2倍以上の差をつけられ、リスク資産保有比率の低さが確認できる(図表3)。・2022年11月、新しい資本主義実現会議にて「資産所得倍増プラン」が決定され、金融資産所得の増加が期待されているが、真に投資を促進するためには、これまでの「貯蓄から投資へ」の阻害要因を特定して取り除いて行く必要があろう。(図表1)日本の家計金融資産構成 ・日本における「貯蓄から投資へ」の阻害要因として、リスク資産の期待収益率の低さ、未成熟な投資促進制度、将来不安による現金選好志向等、さまざまな要因が考えられるが、特に金融リテラシーが重要課題と言えるだろう(図表4)。・金融リテラシーは若年層ほど低いが、これは学校や企業等で金融教育を受けたことがあるかに比例していると考えられる。若年層においても、金融教育を受けた人と受けていない人では、前者の方が金融リテラシーは高い(図表5)。・金融リテラシー調査の日米比較をみると、全体の平均正答率に大差はないものの、金融教育を受けた人や金融知識に自信がある人の割合において、日本に比べリスク資産保有率の高い米国が上回る結果となっている。調査の詳細をみると、とりわけ複利に関する知識の有無が金融知識の自信につながり、さらには投資行動へとつながっている可能性が示唆される(図表6)。(図表4)金融教育のニーズその他3.0保険・年金・定型保証25.4株式等12.7投資信託4.7債務証券1.3(%)わからない19.4 思わない8.8 金融教育を行うべきと思う71.8 (%)706050403020100198085現金・預金52.8(%)9080706050403020100全体63.955.0【米国】リスク資産【米国】現金・預金95200005159010金融教育を受けていない人金融教育を受けた人学生(18-24歳)若年社会人(18-29歳)一般社会人(30-59歳)(60-79歳)63.964.252.953.950.038.141.3現金・預金保険・年金・定型保証日本米国ユーロエリア(%)01020304050607080901002022(出所)日本銀行「資金循環統計」、「資金循環の日米欧比較」、FRB「Financial Accounts of the United States」高齢者(2023年3月末)投資信託54.24.912.611.92.235.577.1正誤問題6問の正答率(平均)(1)複利(2)インフレ(3)住宅ローン(4)分散効果(5)債券価格(6)72の法則金融教育を学校等で受けた人の割合金融知識に自信がある人の割合2.91.311.026.24.42.739.428.62.110.121.029.1日本米国(2022年)(2018年)47435568502441712507255734326302071株式等債務証券その他計(%)(図表2)日米家計の現金・預金/ リスク資産保有比率の推移【日本】リスク資産【日本】現金・預金(図表5)金融教育の効果 (金融リテラシー調査における正答率)(2023年6月末)(図表3)日米欧の家計の金融資産構成(図表6)金融リテラシー調査の日米比較 38 ファイナンス 2023 Nov.「貯蓄から投資へ」の現状「貯蓄から投資へ」の阻害要因大臣官房総合政策課 伊藤 恭平/木下 裕也本稿では、「貯蓄から投資へ」の現状及び課題について考察する。コラム 経済トレンド113「貯蓄から投資へ」の現状と課題

元のページ  ../index.html#42

このブックを見る