ファイナンス 2023年11月号 No.696
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参考文献服部孝洋・稲田俊介(2021)「国債整理基金特別会計および借換債(前倒債)入門」財務総研スタッフ・レポート ファイナンス 2023 Nov. 35齋藤通雄氏に聞く、日本国債市場の制度改正と歴史(後編)債務管理政策について服部 最後の質問になりますが、補佐時代に多くの制度改革をご経験されて、債務管理政策についてはどういう印象をお持ちでしょうか。齋藤 さっきちょっとお話ししたことの繰り返しになりますが、国債管理政策というか、国債課でやっている国債発行を通じた資金調達って、国として必要な資金をどういう風にできるだけ安いコストで調達するかに尽きるんです。これは、一般の個人の人が住宅ローンを借りるときに、固定で借りるか、変動で借りるかを悩むのと、ある種似ています。これから10年、20年で金利が上がるか、それとも下がるとどうなるのかな、みたいなことを考えるわけです。そういった個人の場合と、国の場合とで若干違う点は、個人の場合は金融機関ごとに出されている商品、住宅ローンを選ぶことしかできないが、国は新しい調達手段を作れるわけです。固定利付とか、変動利付とか、どういう年限のものを出して、どう調達するかを考えて、どういう品揃えで、かつそれぞれの商品ごとにどれくらいの金額を配分するのが、資金調達のコストを一番安く抑えられるかをひたすら考えます。は借入金があるのですか、と聞いてもおそらく答えられないですね。「それは財政制度なので主計局に聞いてください」となるだけでしょう。服部 この特会の借入金の金利は、オークションで決めていますよね。齋藤 そうですね。コンベンショナル方式です。ただ、そうはいっても、運用部ショックの直後とか、国債の発行額が増えているときは、その増える分をどうやればちゃんと調達できるのかがまず優先になります。安く調達する前に、まず必要な額を調達しきることが最優先です。そのためにはどうすればいいのかを考えるところから始まって、全額出せる目途がついたなら、年限の長短とか、コストを下げる方法を考えることになります。服部 市場参加者とのコミュニケーションは、当然、当時から重視されていましたよね。齋藤 もちろんです。国債をどういう品揃えにすればいいのかは、結局、それぞれの商品にどのくらい買い手が付きそうかを考える必要があります。どの年限のおわりに服部 この度は、前理財局長であり、国債の制度作りに深く関わってきた齋藤通雄氏にお話を伺いました。2000年前後の制度改正について、大変詳しくお聞かせいただきました。齋藤様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。齋藤 ありがとうございました。国債を増発できそうなのか、あるいは、今はない商品にどれだけのニーズがあるのかを、市場参加者から聞くことが大事です。そういった市場関係の話は、ディーラーや最終投資家に聞かなければわかりませんし、それをきちんと行わないと実際の国債発行もうまくいきませんから。

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