ファイナンス 2023年11月号 No.696
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東日本大震災の経験服部 お聞きする内容を課長時代にうつしていきたいです。2011年に東日本大震災、3.11があったと思います。そのときに国債課の課長でしたよね。齋藤 そうです。国債課には課長としても3年間いました。服部 震災が起きて、復興が必要になる中で、復興債という新しい国債を出すことになったと思います。当時そこに至った背景を教えていただけないでしょうか。齋藤 東日本大震災からの復興のための国債を新しく出すというか、それ以外の国債と切り分けることになったのは、理財局というよりは主計局の管轄です。最近でいえば、脱炭素のための国債であるGX債とかもそうですが、財政支出のためにどういう国債を出したらいいかを決めるのは、実は理財局ではなく主計局なんです。公共事業のために建設国債を出していい、というのは主計局の法律だし、建設国債だけだと足りません、なので赤字国債を出します、という赤字国債のための特例法も、主計局の管轄です。に同じ国債としてマーケットで流通するわけで、流動性向上に寄与します。発行の事務を担う日銀からすると、国債発行する時に、経過利子分のお金のやり取りが発生するので、システム的な整備が必要になって面倒になりますが。服部 リオープンが始まったのは、債務管理リポートをみると、2001年3月ですね。これをみると3年の割引債の導入についても記載がありますが、これはもう今は残っていないですよね。齋藤 残っていないです。これは、5年の利付国債を始めるのに伴って、5年の割引国債をやめた時に、代わりに個人の人が買いやすいような、中期の割引債を出そうということで、3年の割引国債を出すことになったんです。服部 金融機関のアナリストなどは現在と同様、こういった制度について分析していたのでしょうか。齋藤 そうですね。今ベテランの域に達しているような国債のアナリスト達が、当時は中堅の働き盛りで分析していました。復興のためのお金をどうまかなうかということですが、多額のお金が必要になる中で、その必要な多額のお金を復興で日本経済に負荷がかかる中で一度に税負担としてとるわけにはいかないですよね。でも、復興のためにはある程度まとまったお金をすぐに投入していかないといけない。そこで、国債で一旦資金調達するけど、その国債を長年かけて、復興のための税を通じて少しずつ税負担をしていただいて、国債を返していくことになりました。ただ、このような制度を考えるのは主計局です。東日本大震災復興のために復興債ができ、復興債の償還財源として復興特別税ができ、これらのお金を分けて管理する仕組みとして特別会計がつくられています。服部 どういう目的の国債を出すかは、主計局が決めるわけですね。復興債は、国債としては、普通の国債と区別されずに出てきますね。でも実は裏では、復興債として整理されているというイメージですよね。齋藤 その通りです。服部 財政投融資で対応するということは考えなかったのでしょうか。齋藤 財投は、補助金とか渡し切りのお金とは違って、お金を貸して、最終的には返してもらうという性質のお金です。なので、復興のように、例えば津波の被害を受けた部分をもう一度整備するといった目的だと、お金を貸し付けて、いつか返してもらうというスキームではうまくいかないんです。服部 復興債に関しては、60年償還ルールも適用されないですよね。齋藤 適用されないです。結局、なんのために国債を出すのかという意思決定は国債課でやるわけではなくて、予算の関係であれば主計局、財投改革後、財投のために国債を発行する場合は財政投融資の部署と主計局がやります。その上で、こういう国債を新しく出すからよろしくねと、調達する金額が伝えられて、どうやったらできるだけ低いコストで調達できるかを考えるのに特化しているのが国債課です。そういう意味で言うと、復興国債も、マーケットで国債として出す分には、建設国債・赤字国債といった一般会計の国債あるいは財投債と区別せずに出していて、最終的に発行した国債の収入金のうち、一般会計の収入としてはいくら、財投特会の収入としてはいくら、復興特会の収入としてはいくら、とこちらが分けるだけです。 30 ファイナンス 2023 Nov.

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