図表2 2000年に導入された15年変動利付国債の商品性1.商品性(1)適用利率:「基準金利(※注)-α」とする。なお、適用利率については、0.01%刻みとし、下限は0%とする。(※注) 基準金利については、変動利付国債の利率決定の直前に行われた10年利付国債入札における平均落札価格を基に算出される複利利回り(小数点以下第3位を四捨五入し、0.01%刻み)とする。 ファイナンス 2023 Nov. 27齋藤通雄氏に聞く、日本国債市場の制度改正と歴史(後編)服部 そういう背景があったんですね。15年変動利付国債の発行が開始されたのは、1983年2月ですね。齋藤 そうです。それで99年頃、最初の15年変動利付国債を購入していた機関投資家の一部から、また同じような商品を出してほしいという要請が来たんです。じゃあ我々としてはどうしようかということを考えた時に、昔出していたものと極力同じような商品性のものを出そうということになりました。当時は、運用部ショック後で、発行が増える国債の安定的な投資家を探していましたので。しかし、昔と全く同じ商品で、10年金利をフラットに払うと、それはさすがに金利を払い過ぎなので、長短金利差だけアルファで引いて、「10年金利-α」という商品設計にさせてくださいというところに落ち着きました。(2)利払いの回数及び適用利率の改定頻度利払いは年2回とし、適用利率は利払いの都度改定する。なお、適用利率の決定は利子計算期間開始前に行う。2.入札方法財務省が事前にαを設定した上での価格競争入札によるコンベンショナル方式。なお、αについては満期まで変更しない。※ 平成12年6月債(第8回債)から平成17年5月債(第34回債)までは、利回り競争入札によるダッチ方式(基準金利とのスプレッドαを入札)で実施した。また、このαをどれぐらいにするのかというのは、我々が一方的に決めないで、マーケットの皆さんに決めていただければよいと考えました。それで、αは入札で決めることにしましょうということになりました。また、特定の投資家さんに相対で個別に出すのではなくて、入札で誰でも買える商品性にしませんかという話にもなり、それで再発行を要望した投資家も納得したんです。そういう訳で、15年変動利付国債の金利は、「10年金利-α」という形になりました。当時は今と比べると、イールドカーブが立っていて長短金利差があったので、αがそこそこ大きくても、投資家からすると魅力がある商品だということで、割と人気が出たということです。服部 15年という年限も、かつてあったものの年限を踏襲したわけでしょうか。齋藤 この15年変動利付国債に限りませんが、新しい国債を出す場合は、例えば日銀のシステムとか、色々と新しいものが必要になるんです。商品設計こそ変えましたけど、15年変動利付国債は昔1回出したことがあるので、変動利付国債を15年で出すのであればシステムの構築も割と簡単にできるということもあって、年限は15年のままとなりました。服部 物価連動国債には当時関わっていらっしゃったのでしょうか。齋藤 物価連動国債の1回目の導入の時は、私は関わっていませんでしたが、1回止まっていたものの発行を再開した新型の時は、私がまさに担当課長でした。服部 2回目の新型の物価連動国債の時ですね。物価連動国債と変動利付国債は金融危機時に発行が停止されていますが、変動利付国債は再開しないで、物価連動国債だけ再開されました。どういう背景があったのでしょうか。齋藤 投資家から見た時に、15年変動利付国債は、受取金利が「10年金利-α」であり、これはある種デリバティブを組み込んだような商品設計になっていたんです。αは発行された瞬間に決まっていましたので、イールドカーブがスティープニングする、つまり長短金利差が拡大すると、発行時に買った人からすれば受取利息が多くなって有利ですし、逆にイールドカーブがフラットニングしてしまうと、αが多く引かれて受け取れる利息が短期金利よりも減ってしまうので、不利な商品になってくる。イールドカーブの形状から言うと、もうフラットニングしてしまった後なので、商品性としてそもそも魅力がなくなっていて、投資家からすると誰も欲しいと思わなくなっていました。服部 変動利付国債に対して、物価連動国債は再発行
元のページ ../index.html#31