ファイナンス 2023年11月号 No.696
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*1) https://www.oecd.org/coronavirus/jp/data-insights/strengthening-public-trust写真 6 左側が大空幸星さんだけ注意するようにしています。OECDによる調査*1では、日本での政府に対する信頼度は他の国と比べてとても低く、「国が言っているのだから」と言って信頼してくれない人たちが一定数いるということは認識しておく必要があると思います。その場合、政府から直接正しいメッセージを発信し続けることも諦めてはいけないですが、信頼度を高めるため、理解者を増やしていく工夫も大事だと思います。税も国の政策決定と国民の生活の結節点ですよね。自分の支払った税が何にどれくらい使われているのかという興味関心は間違いなくあると思いますので、そのニーズに応える広報・情報発信を考えると良いと思います。例えば、先ほど挙げたOECD調査では、日本よりも税率が高い国々での政府への信頼度が日本よりも高く、それは恐らく「税金がどう使われているか」ということが可視化されているため納得感があるのだと思います。そのあたりは日本でも力を入れていくことが不可欠だと思います。吉岡主任 身近なところにも公共サービスがあり、例えば学校教育でも、義務教育が税金や借金等を元手にして行われているということは分かりやすく伝えていく必要があると思いますね。国の予算の3割を借金で賄っていて、累積では国の予算の10倍の借金を抱えているにも拘わらず、議論が先送りになりがちです。もちろん重要な政策にはしっかりと取り組まなければなりませんが、負担の一部は将来世代が負っていて、それがどんどん膨らんでしまっていることは、しっかりと問題意識を共有していかないといけないと思います。大空幸星さん その点は、国家観に哲学があるかが重要だと思います。後の世代に負担をお願いしたとしても、こういう国を作らなきゃいけない、100年後の子どもたちにもこれくらいの生活基準を享受してもらいたい、といった考えが重要だと思います。この時代に役人を職業として選んでいる人は、その国家観や社会像というものがきっとあるのではないでしょうか。権力欲のある人もいるかもしれませんが、一人の人間としての何かしらの矜持があり、そういったものが表に出てくると、もっと面白くなりますし、特に20代とかの若い人達にはそういった気持ちをどんどん膨らませていって欲しいなと思います。ちなみに、皆さんはどうして財務省を志望したのですか。寺井係員 なるべく多くの人、みんなのために、この国に資するインパクトのある仕事をしたいと思っていた時に財務省の話を聞き、予算・税制の面からあらゆる政策にコミットできることの可能性の広さに魅力を感じて志望しました。職員の話を聞く中で「しんどいことはあるかもしれないけど、こういう人たちと働きたい」と思ったことが、財務省を選ぶ決め手になりました。吉岡主任 自分がしんどいときに、それが社会や人のためであれば頑張れそうだなと思い、この職場を選びました。自分が取り組んできた仕事は、自信を持って人に話せるかなと思います。成田係長 大空さんは、ご自身でNPOを立ち上げられているので、人を集める立場だと思いますがどういったマインドで取り組まれていますか。大空幸星さん そうですね。常にビジョンを示し続ける必要があり、それは情熱のようなものなのですが、情熱がありすぎると長続きしないとも思っています。NPOを立ち上げた当初は、人を集めるため強い情熱を語って惹きつける必要はありました。しかし長く続く組織にしようとすると、ビジョンを他の人にもどんどん浸透させていかなければならず、そうなるとただ大きな声を上げて突き進んでいくだけではダメで、「仕事としてやっていて、休む時は休みます」という見せ方も必要だと思っています。原田室長 本日はお集まりいただき、若い視点から率直なご意見等をお聞かせいただきありがとうございました。また次回、違った切り口でもお話を聞ければと思います。 14 ファイナンス 2023 Nov.おわりに

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