写真 3 主税局調査課内国調査第二係長 成田 旭宏成田係長 大空さんは審議会の委員も務められていますが、一般的な政策決定の在り方について、どういう風に見えているのかお伺いしたいです。大空幸星さん 役所は業務のプロセスが、かなり個人に依存しているところがリスキーだなと思います。行政の仕組みは外から見るとシステマティックに見えて、実は個人の裁量が大きいですよね。また、法案作成のプロセスである審議会には20人もの委員がいることがあります。時間に限りがあるのはわかりますが、会議の中で一人あたり数分程度しか発言できません。飲み会の方が実質的な話をできたりすることも…(笑)。時間の使い方という意味では、審議会の調査で関連団体へヒアリングをする際、その多くが委員が代表を務める団体だったことも。より多様な意見を集めるために、委員の団体ではなく、地方の団体等へのヒアリングをすべきと思いました。吉岡主任 飲み会の場の方が意見を言いやすいということもあるのかもしれませんが、国民から見るとやっぱり不透明に見えるし、政策形成過程の可視化のためには審議会という場が重要ですよね。大空幸星さん もちろん審議会の場で発言することによって変わることもあります。地方の関連団体へヒアリングしたらどうかという件も、自分が発言したことで、他の団体へもヒアリングすることになりました。変えられるのはこういった小さなことばかりかもしれませんが、それが積もって大きな変化になっていくのだと思います。また、審議会といえばこれまでは弁護士や学識経験者を中心に選任するケースが多かったのだと思いますが、審議会によっては大学生を委員に選任するなど、ちょっとずつ変わってきてはいると思いますね。吉岡主任 気になったことがあれば、是非ご発言いただければ良いのかなと思います。役所は大きな船なので、中の職員が動かすには調整に大きな労力がかかりますが、委員等の外の人がオフィシャルな場で言ってくれることによってスピーディに動かすことができる場合もあると思います。できるわけではないと思います。分野によって違った難しさがあると思いますし、例えば教育投資の効果を測ることは簡単なことではないはずです。EBPM(証拠に基づく政策立案)と言うのは簡単ですが、実際はとても労力がかかるものなので、事業を作る段階で、どのようにデータを集め、どのように効果検証を行うかを予め検討して組み込んでおくことも大事だと思います。成田係長 コロナ対応においては、エビデンスがない中で政策を実行していかなければならないということも往々にしてありました。大空幸星さん たしかに、緊急の場合は走りながら考えなければならないので、エビデンスの取得等のために機動力がなくなってしまっては元も子もないですね。例えば民間の財団の中には、エビデンスの収集のために事業規模に比して膨大なリソースを投入している例も見たことがあります。効率の良いエビデンスの収集方法とセットでなければEBPMも回っていかないと思います。寺井係員 総合政策課の寺井です。経済調査を担当しています。効果検証ができているということを説明する資料作成に時間と労力をかけている例を見たことがありますが、そのような資料作成をすることが目的となっては、EBPMの理念から遠ざかっていくことになると思います。大空幸星さん そういった資料作成の業務についても、過去の検証をすることによって新しいことを考えたり生み出せたりできるような仕組みにしていけるとよいですよね。 12 ファイナンス 2023 Nov.政策決定の在り方について
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