ファイナンス 2023年11月号 No.696
12/72

開発途上国向けの研修の様子GF事務局が日本の 徴収共助の取組を高く評価税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(以下GF)においては、近年、各地域にイニシアティブを立ち上げてきている。この地域の一つにアフリカがあり、平成27年にアフリカ・イニシアティブが立ち上げられた。当該イニシアティブの活動において、情報交換の活用を通じた持続可能な歳入確保を企図して、令和3年4月に徴収共助に係るキャパシティ・ビルディングのプロジェクト(クロスボーダー・コレクション・プロジェクト)が立ち上げられた。日本の徴収共助の取組を高く評価したGF事務局から、同プロジェクトに日本のオブザーバー参加の要請があり、国税庁徴収課がこれに応えてきた。例えば、これまで数次にわたり、徴収共助の実施のためのCRSや情報交換制度の活用についてプレゼンを実施したほか、令和5年7月に公表された同イニシアティブの活動報告書に日本から徴収共助の有用性に関する記事を寄稿した。国税庁徴収課では、当該レポートの策定はもとより、その本会合やワーキンググループに参加し、貢献してきた。議論の内容は、新型コロナや原油高など経済危機への対応から、徴収業務のDX、徴収共助ネットワークの推進策まで多岐にわたっている。各参加国から、徴収部署の実務家が参加しており、議論の内容は専門的である。アジア地域においても、令和3年11月にアジア・イニシアティブが立ち上げられた。当該イニシアティブのいわば憲章に位置づけられる宣言文書には、令和4年7月のG20財務大臣会合時に各参加国の財務大臣が署名している。当該宣言文書の中では、税務行政執行共助条約の普及促進を通じた同地域での執行共助の拡充が謳われている。この執行共助の一類型に、徴収共助が含まれているところ、徴収共助制度の同地域における導入促進に向けて、同イニシアティブでは今後キャパシティ・ビルディング等の活動を進めていくこととなっている。同地域では、徴収共助制度を導入していない国も存在しており、日本の国税庁には、これまで徴収共助に関して取り組んできた知見を活かした、積極的な貢献が期待されている。このほか、国税庁では、政府開発援助(ODA)の技術協力の枠組み等の下、開発途上国の税務行政の改善や日本の税務行政に対する理解者の育成等を目的に、開発途上国に対する技術協力に取り組んでいる。開発途上国からのニーズの中に徴収共助のトピックが含まれることもあること等から、国税庁から知見のある徴収職員を相手国へ派遣するほか、国内における税務行政全般に関する研修プログラムの一部に徴収共助のトピックを盛り込むなどして、研修を提供している。このような技術協力を通じて、日本の徴収共助の取組がいわば開発途上国に輸出されるわけだ。その結果として、徴収共助ネットワークの拡充、さらには納税者のコンプライアンスレベル向上が期待される。第50回アジア税務長官会合を 国税庁がオンライン開催アジア地域の各税務当局に対しては、アジア税務長官会合(SGATAR:Study Group on Asia-Pacific Tax Administration and Research)の機会も活用して、徴収共助の有用性を唱えてきた。例えば、国税庁のホストでオンライン形式により開催された、第50回会合(令和3年11月)では、大鹿国税庁長官(当時)が日本の徴収共助の取組についてプレゼンを行った。SGATARに関しては、その後も国税庁徴収課職員が複数回にわたって参加国向けの実務研修でプレゼンターを務めるなど徴収共助のキャパシティ・ビルディングに精力的に貢献しているところ。 8 ファイナンス 2023 Nov.

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る