ファイナンス 2023年11月号 No.696
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OECD税務長官会議第16回本会合の様子 ファイナンス 2023 Nov. 7TDMN等で徴収共助を含む 国際徴収の議論を展開前述のように、徴収共助ネットワークの拡充に向けな徴収をサポートできるよう努めている。このミーティングにも関連するが、国税庁では徴収共助の実施取決めを外国当局と順次結んできている。実施取決めとは、条約上、権限のある当局同士が条約の適用方法について整理の上、合意するもの(税務行政執行共助条約第24条第1項やOECDモデル条約第27条第1項)である。つまり、税務執行共助条約の説明報告書のパラグラフ247の表現を借りれば、「facilitating the practical operation of the Convention」を目的にするものであり、要請の送付の宛先に掲げるべき情報、要請に添付するべき書類、要請に対する回答・処理経過の報告、要請にあたり使用する言語、用いる通貨及び為替相場、要請国の権限のある当局への送金、要請の撤回方法など、徴収共助の実施にあたり当局間で認識共有しておくことが望ましい実務的な事項が整て、国際的な議論が活発になってきている。最近では、OECD税務長官会議(FTA:Forum on Tax Administration)の第16回本会合(令和5年10月)において、住澤長官・中村審議官から日本の経験を踏まえた当該ネットワーク拡充を唱えるプレゼンを実施し、FTAメンバー国の長官らと徴収共助の重要性の認識を確認し合った。また、同会議においてはTax Debt Management Network(TDMN)という税の徴収について議論する部会が設置されている。各参加国の徴収部局の職員等が国内や国際的な徴収実務に関する共通の課題について議論するほか、参加国間でベスト・プラクティスを共有し合う会議体だ。理される。この実施取決めも、徴収共助の円滑かつ着実な実施に有効に寄与している。なお、当然ではあるが、徴収共助は税務執行協力という国際協力の枠組みの一つであり、相互主義の考えがその前提にある。よって、日本が徴収共助の被要請国となる場合もあり、このような被要請事案への適切な対応も、国税庁の重要な取組の一つである。要するに、外国から要請を受けた場合には、外国租税債権を自国の租税の徴収と同様に、法令等に基づいて可及的速やかに徴収し、要請当局に送金を行っている。日本の迅速かつ的確な対応ぶりについては、相手方当局から折に触れ、高い評価を受けている。このように相互主義を確実に実現していくため、被要請事案への対応に関しても、国内の制度や体制の整備、職員の意識醸成に取り組んでいる。このTDMNにおいて、徴収共助を含む国際的な徴収の一層の発展に向けた議論が展開されている。また、当該議論のマイルストーンの一つとして、令和2年12月に『Enhancing International Tax Debt Management』を策定し、公表している。国際的な議論や研修へのコミット国税庁徴収課の職員が国際的会合や ワーキンググループへ積極的に参加し貢献

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