ファイナンス 2023年10月号 No.695
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(出所)関税・外国為替等審議会関税分科会(2020年10月23日)における財務省説明資料、P.25日本で貨物を輸出入する際の税関への輸出入申告は、かねてより、蔵置官署に対して行うことが原則とされてきました。輸出入の許可を受ける前の貨物を蔵置する場所は「保税地域」と呼ばれますが、保税地域は税関の管轄下にあり、ここで貨物の検査を行うことで、貨物のすり替え等の違法行為が行われるリスクを低く抑え、通関の適正性が確保されます。一方で、輸出入申告を行う税関官署(申告官署)について、蔵置官署以外の官署を選択することも可能となれば、輸出入申告時の官署選択の柔軟性が高まり、結果、貿易を円滑化する効果が期待できます。「通関の適正性」と「貿易の円滑化」は、どちらも税関の大事なミッションであり、財務省において、外部有識者も交え両者のバランスをうまく取ることができる制度を検討した結果、通関の適正性及び税関における業務処理の効率性を損なわない範囲内で、申告官署の選択に柔軟性を与えることとし、関係法令の改正を経て、2017年10月8日より自由化制度が導入されました。自由化制度の具体的な利点として、貿易事業者は、例えば自社にとって利便性の高い官署に申告を集約し、その官署に近接した営業所で申告書類の作成等の通関業務を一元的に行う、といったことが可能となります。各貿易事業者がその実情に応じて自由化制度を活用することにより、輸出入事務の効率化やコスト削減が期待されます。また、税関手続きを含めた物流全般に目を向けると、自由化制度は企業がサプライチェーンネットワークの効率化を図る際にも活用でき、その観点からも、本制度は貿易の円滑化に資すると考えられます。【参考】自由化制度の概要 86 ファイナンス 2023 Oct.【コラム1】「輸出入申告官署の自由化」制度について「輸出入申告官署の自由化」制度(自由化制度)とは、AEO事業者(※)のうちAEO輸出者、AEO輸入者及びAEO通関業者が、貨物の蔵置場所を管轄する税関官署(蔵置官署)以外の官署に輸出入申告を行うことができる制度です。例えば、成田空港(東京税関成田航空貨物出張所管内)に蔵置された貨物を、東京税関本関に輸出入申告することが可能となります。(※) 「AEO(Authorized Economic Operator)制度」とは、貨物のセキュリティ管理と法令遵守(コンプライアンス)の体制が整備された事業者に対し、税関が承認・認定を行い、税関手続きの緩和・簡素化策を提供する制度です。現在では、日本を含め90以上の国・地域で導入されている、民間企業と税関の信頼関係(パートナーシップ)に基づくプログラムといえます。本制度に基づき、税関より承認または認定を受けた者を、「AEO事業者」と呼んでいます。

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