ファイナンス 2023年10月号 No.695
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(出所)財務総研リサーチ・ペーパー『「輸出入申告官署の自由化」制度の利用実態について』、P.17の図表17(出所)財務総研リサーチ・ペーパー『「輸出入申告官署の自由化」制度の利用実態について』、P.21の図表22(出所)財務総研リサーチ・ペーパー『「輸出入申告官署の自由化」制度の利用実態について』、P.23の図表25ファイナンス 2023 Oct. 85PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 24図表3: 自由化制度導入前後での申告官署数及び蔵置官署数の変化(輸入)図表4:関西国際空港における台風上陸前後での申告件数の推移図表5:台風災害時における自由化申告の利用効果 も集約していたことが判明しました。図表3は、2016年(自由化制度導入前)と2018年(導入後)の両年に輸入実績のある輸入者に着目し、各輸入者が利用した申告官署及び蔵置官署の数がどう変化したか、比率(2016年水準=1)を散布図で表し確認したものです。縦軸・横軸ともに、多くのサンプルが0~1の範囲に入っている(つまり、多くの企業について、申告官署数と蔵置官署数のどちらも減少している)ことが見て取れると思います。輸出も同様の傾向であり、これらの結果は、研究実施者に驚きをもって迎えられました。4.について、まず、台風上陸前後での関西国際空港における一般輸入申告について、自由化申告と非自由化申告の件数(自然対数値)の推移を比較したものが、図表4です。台風上陸前、両申告について概ね同様のトレンドが確認できるのに対し、台風上陸後は、どちらも申告件数の減少が見られたものの、自由化申告(実線)はその減少幅が小さく、かつ台風上陸前の水準への回帰に要する期間が短いことが確認できました。その上で回帰分析を実施し、結果を踏まえ自由化申告の災害時の事業継続への有効性を図示したものが、図表5となります。台風上陸前後で、非自由化申告の件数は概ね半減し(▲52.5%:二重線)、この台風災害時の傾向が自由化申告でも同一と仮定した上で(点線)、自由化制度を利用することによる申告件数の減少を相殺する効果(53%:実線)が確認されました。これにより、自由化制度が災害対応にも役立っているという主張を、統計的に裏付けることができました。当然ながら本研究には、利用したデータや分析手法等に起因する限界が存在しますが、本リサーチ・ペーパーが提示する分析結果は、自由化制度の利用に関する様々な知見を提供し、税関当局における政策検討に加え、貿易事業者の日々の業務遂行に大いに資するものであると考えています。また、リサーチ・ペーパーには、ここで紹介したもの以外にも様々な分析やその考察を実施していますので、関心のある方は是非お読みいただきたく思います。

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