ファイナンス 2023 Oct. 83PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 24[インタビューの様子] 分で手を動かさないと身につかないと実感しました。その意味において、研究の成果を出すことに加えて、その過程でデータ分析のスキルアップに繋がるものですので、人材育成という観点からも、このような内部職員研究の取り組みは継続的に実施していく必要があるのではないかと感じました。また、研究成果を発表して終わりではなく、実際に税関の現場で本制度に係る業務に携わっている職員等と意見交換を行い、フィードバックをもらい次の研究に繋げるということも大切だと思っています。これは、財務省の研究機関である財務総研だからこそできることだと思います。大塚:職員が実際にデータ分析を行うことで、分析スキルを上げるということにも繋がりますが、それに加えて、関税局の職員といっても、実際に輸出入申告データに触れたことがある人や更にはその加工をしたことのある人は限られていると思います。また、膨大なデータにそもそもどのような項目が含まれているかを詳細に知っている人は、実はそんなに多くはないのではないかと思っています。自ら手を動かしてこうした分析作業を行うことは、税関が保有しているデータについて勉強することになります。加えて、税関の制度や施策の導入経緯や中身を勉強したりすることも必要になるので、改めて税関行政について勉強する良い機会になるのではないかと感じています。更に、近年ビックデータやEBPM(証拠に基づく政策立案)という言葉が飛び交ってはいますが、日々業務が忙しい中、腰を据えてデータ分析を行うことは、なかなか難しい面もあるのではないかと思います。もっといえば、税関のデータを用いた分析のアウトプットが税関行政の企画立案にとって有用である、ということを実感する機会がないと、ただでさえ忙しい中では、手間のかかるデータ分析を詳細に実施しようという意識になりにくいのではないかと思います。仮にそうだとすれば、データ分析を一層行うように意識が向いて行くためには、役に立つ、興味深い等とポジティブに思ってもらえるように、少しずつ目に見える実績を積み重ねていくことが大事なのかなと思います。今回の内部職員研究により、その第一歩を踏み出せましたので、このスキームでの研究にはそのような意義があるのではないかと思っています。伊藤:今後の展望等があれば教えて下さい。根岸:自由化制度については、先ほども少し触れましたが、関係部局との議論の中で頂いた示唆を踏まえ、もう少し深掘りした分析を行いたいと考えています。また、税関は自由化制度以外にも様々な施策を実施していますので、あれもこれもと今すぐに手を広げることは難しいですが、それらについても色々と分析してみたいとも思っています。財務総研の職員として、そして税関からの出向者として、自身ができる貢献を、輸出入申告データを用いた政策分析研究という形で果たしていきたいと考えています。本研究では、2014年から2021年まで計8年間の輸出入申告データを用いています。輸出入申告データには多種多様なデータ項目が含まれているのですが、本研究ではそのうち、自由化申告の特定に加え、輸出入貨物や税関官署等の申告情報の把握に必要なデータ項目を主に用いました(図表1)。2.研究成果紹介本節では、リサーチ・ペーパー『「輸出入申告官署の自由化」制度の利用実態について』のポイントを解説します。(1)分析に利用したデータ・手法
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