ファイナンス 2023年10月号 No.695
85/102

ファイナンス 2023 Oct. 81PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 24[プロフィール]大塚 高規関税局関税課課長補佐 兼 財務総研総務研究部主任研究官2011年4月に東京税関に入関。これまで主に、財務省関税局で関税政策や税関行政の企画立案を担当しました。現在は、関税局関税課で貿易統計等に基づく分析を主に担当しています。【参考】内部職員研究のイメージ図 1.研究実施者へのインタビュー本節では、今年7月に財務総研に着任した伊藤主任研究官(以下、「伊藤」)が、実際に研究を実施した根岸主任研究官(以下、「根岸」)と、関税局関税課の大塚課長補佐(財務総研の主任研究官に併任)(以下、「大塚」)にインタビューを行った内容を紹介します。の範囲内である必要があります。具体的には、内部職員研究の実施に当たっては、研究計画の策定や輸出入申告データの利用、成果の公表等に関して定めたルールに、厳格に従う必要があります。伊藤:では、この内部職員研究のテーマとして自由化制度を選んだ理由をお聞かせ下さい。根岸:現在、輸出入申告データを用いた「共同研究」(☞共同研究の概要については、P.87のコラム2をご覧ください。)のスキームで行われている研究は、国際貿易や国際金融等の分野における、学術的な関心の高いテーマが選ばれており、より実務的な観点からの関心が高い税関の各種施策を直接取り上げた研究は行われていません。かねてより、税関の保有しているデータを活用できるのであれば、税関の施策に着目した研究を実施し、研究成果として税関にお返ししたいと思っていました。自由化制度は、日本税関にとって、近年行われた非常に大きな制度改正だったことから、研究のテーマに選びました。制度導入から5年が経過した区切りの年であったことや、制度が導入された2017年が、分析に用いる2014年~2021年のデータセットのちょうど中間地点に当たり、うまく制度導入前後の比較ができるかなと考えた、という点も理由としてあります。更に、財務省や業界団体の公表資料で、自由化制度を台風発生時における企業の事業継続に活用した、と言及されており、これを定量的に示すことができれば、本制度の価値を更に高めることができるな、とも考えました。伊藤:リサーチ・ペーパーの作成、大変お疲れ様でした。財務省の職員自身が行政データを活用して行った分析を「内部職員研究」と呼んでいますが、今回の内部職員研究の概要や意義について、教えてください。根岸:輸出入申告データを用いた内部職員研究は、簡単にいえば「内部職員による行政データを用いた政策分析研究」です。財務省の研究機関である財務総研の職員自らが、税関の輸出入申告データを用い、財務省各部局のニーズや職員自身の問題意識に基づき設定したテーマについて、研究を実施します。職員自身が実施するため、当然ながら研究のレベルは職員の経験やスキルに左右されますが、研究実施に必要な知識やノウハウ、研修の機会等は、財務総研が有するアセットを最大限活用することができます。また、研究テーマに関係する部局の職員が、財務総研に併任され、メンバーに加わることで、政策担当者の持つ問題意識や専門知識を、よりダイレクトに研究に活用することも積極的に行うこととされています。もちろん、内部職員研究は財務総研職員であればどんなテーマでも簡単に実施できる、という訳ではありません。輸出入申告データが有する秘密情報の保護に万全を期するのはもちろんのこと、例えば税関の施策に関する分析等、研究テーマが真に財務省の行政目的

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る