(出所)国土交通省「交通関係基本データ」、「運輸部門における二酸化炭素排出量」、「「2024年問題」解決に向けて」、全日本トラック協会「今すぐわかる標準的な運賃」、日本貨物鉄道(株)「コンテ(出所)国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)概要」、「モーダルシフト等推進事業」、「総合物流効率化法の認定状況」、グリーン物流パートナーシップ「事例集(モーダルシフ営業用貨物車(g/トンキロ)3000(図表2)輸送機関別国内貨物輸送量の推移(百万トンキロ)航空500,000400,000300,000200,000100,0000・モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を大量輸送が可能で環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいう。モーダルシフトは地球温暖化対策として注目されている上、道路混雑緩和、交通事故縮小など、様々な社会課題への対応策としても期待されている。例えば、1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)ときに排出されるCO2の量をみると、トラック(営業用貨物車)に対し、鉄道は約1/11、船舶は約1/5の排出量しかない(図表1)。・現状、国内貨物の輸送機関別輸送量は、自動車が約5割、内航海運が約4割を占め、鉄道の占める割合は全体の約5%となっている(図表2)。一方で、鉄道とトラックにおける東京から各都市への輸送コストを試算すると、長距離輸送の場合にはモーダルシフトによるコストメリットがあり、事業者の負担としては鉄道が利用されやすいことが考えられる(図表3)。・2024年4月以降、働き方改革関連法によりドライバーの時間外労働時間、拘束時間が減ることによる、人手不足等が課題となっている(図表4)。物流各社が十分なドライバーを確保できず、安定的な輸送が困難になるとの懸念があり、物流の「2024年問題」と呼ばれている(図表5)。労働力不足が懸念される「2024年問題」に対応するため、自動車輸送が貨物の最寄りの転換拠点までと、目的地付近の転換拠点からの輸送だけで済むモーダルシフトが有用になる。鉄道船舶100内航海運自動車201720182019・政策においても、モーダルシフトは推進されている。令和3年6月に閣議決定された総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)の下、物流施策の方向性として、労働力不足対策と強靭性、持続可能性を確保した物流ネットワークの構築が挙げられている(図表6)。・また、平成28年10月改正の物流総合効率化法では、流通業務の効率化を図る計画の認定を受けた事業に対して補助金を付与することで、モーダルシフト等の推進を後押ししており(図表7)、毎年数十件程度の利用で推移している(図表8)。・さらに、物流分野における環境負荷低減や物流の生産性向上等に資する取り組みを促進するため、「グリーン物流パートナーシップ会議」が開催されている。本会議では、持続可能な物流体系の構築に関し顕著な功績があった取り組みに対して、国土交通大臣表彰、経済産業大臣表彰が行われている(図表9)。・モーダルシフト推進事例として、ヤマト運輸(株)では九州発関東行きの荷物の幹線輸送をトラック主体から鉄道輸送に転換したほか、佐川急便(株)では電車型特急コンテナ列車の開発や、トヨタ輸送(株)とコンテナを共同使用して貨物輸送を行うなど、実際に輸送方法の転換が進められている。200横浜宇都宮新潟名古屋仙台大阪高松広島福岡鉄道20202021(図表3)東京から各都市への輸送コストの比較(図表4)働き方改革関連法案による変更点と懸念点(千円)見直し(2024年4月~)3001日 最大15時間以内1か月 原則284時間以内2001年 原則3,300時間以内継続11時間を基本とし、1000(図表7)モーダルシフト等推進事業概要(注)トラックは中型車(積載量4t)鉄道貨物は12ftコンテナ(積載量5t)で試算。鉄道の集配距離(トラック区間)は集荷10㎞、配達10㎞と設定。トラック(注)本試算は、経済産業省・国土交通省・農林水産省主催「持続可能な物流の実現に向けた検討会」において使用されている2020年度データ2019年度データ不足する輸送能力最大補充必要人員不足する労働時間不足する営業用トラックの輸送トン数最大補充必要人員分の営業用トラックの貨物輸送トン数実績災害の激甚化・頻発化支援対象となる取り組み大量輸送機関への転換モーダルシフト幹線輸送の集約化トラック輸送の効率化物流の社会的価値の再認識主な事業者ネスレ日本(株)イオングローバルSCM(株)経済産業大臣表彰鉄道不足する輸送能力(最大補充必要人員)不足する営業用トラックの輸送トン数ドライバー数に対する最大補充必要人員数の割合不足する労働時間に対して、一日一時間の労働を行う人員を補充する際の必要人員数年間の一人あたり労働時間実績について、3,300時間を超える時間計画策定経費補助運行経費補助補助率:1/2以内上限500万円補助率:1/2以内上限500万円(過疎地域のみ)共同輸送貨客混載補助率:定額上限200万円CO2排出量の削減に資する取組み(図表9)グリーン物流パートナーシップ会議の表彰事例事業概要・取り組みのポイント表彰国土交通大臣表彰トラック中心の輸送から、輸送距離に応じた最適な配送モード(トラック・鉄道・内航海運)を設定し、作業の効率化と生産性の維持・向上を実現した。繁忙期の物流増加時に、各社それぞれで輸送手段を確保して対応していた状態から、荷主企業10社による共同運行を実施し、運休ダイヤを活用して貨物専用の臨時列車を運行する等によりモーダルシフトを推進し、輸送力向上を実現した。(件)8070605040201720182019202020212022現行1日 最大16時間以内1か月 原則293時間以内1年 原則3,516時間以内拘束時間休憩時間9時間下限懸念点・ドライバーの拘束時間減少による労働力不足継続8時間以上・労働力不足に伴う輸送量の減少、安定輸送の確保12.7%14.3%対象外3.2億トン4.1億トン本稿では、労働力不足が懸念される物流の「2024年問題」への対策として推進されているモーダルシフトの有用性について考察する。(図表1)輸送機関別二酸化炭素排出量(図表6)総合物流施策大綱概要(図表5)「2024年問題」による不足する輸送能力の試算(図表8)総合物流効率化法における認定事業数の推移ナ時刻表」、NX総合研究所「「物流の2024年問題」の影響について」モーダルシフトを推進する政策と推進事例技術革新のSDGs対応への社会的生産年齢人口減・ドライバー不足進展機運新型コロナの感染拡大EC市場急成長新しい生活様式①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化②労働力不足対策と物流構造改革の推進③強靱で持続可能な物流ネットワークの構築ト)」、ヤマト運輸(株)HP「関東ー九州間でフェリーによる海上輸送を活用したモーダルシフトを促進」、佐川急便(株)HP「脱炭素社会の実現に向けて」 74 ファイナンス 2023 Oct.モーダルシフトの概要と現状コラム 経済トレンド労働力不足への対策としての モーダルシフトの有用性大臣官房総合政策課 調査員 胡桃澤 佳子/横山 修平112
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