ファイナンス 2023年10月号 No.695
50/102

*1) 執筆者の肩書は、令和5年6月30日現在*2) 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」 *3) 神田 眞人「新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について」「ファイナンス」令和2年8月号 *4) 鳥羽 建/奥山 勇太/小土井 一洋/中川 忠明/大和 史明「新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について〜令和2年度後半以降の動向〜」 *5) 本稿の執筆に当たっては、政府系金融機関、関係省庁、財務省政策金融課の関係者の方々に多くのアドバイスをいただいた。特に、三國谷嘉晃氏、中https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.htmlhttps://www.mof.go.jp/public_relations/■nance/202008/202008c.pdfhttps://www.mof.go.jp/public_relations/■nance/202209/202209g.pdf川忠明氏、大和史明氏には文章の構成の検討も含めて多大なご助力をいただいた。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。 46 ファイナンス 2023 Oct.1.はじめに令和2年より3年にわたり猛威を振るってきた新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という。)について、令和5年5月8日に感染症法上の位置づけが「2類相当」から「5類感染症」になるなど、本稿執筆時点(令和5年6月)において、ようやく社会経済活動を正常化する方向へと向かっている。*2政府は、新型コロナの影響を受けた中堅・大企業に対して、政策金融を通じて種々の支援を講じてきたが、官民金融機関による資金繰り支援等の効果もあり資金繰り需要が落ち着いたこと等を受け、令和4年9月末を以て、株式会社日本政策投資銀行(以下、「政投銀」という。)等による「危機対応業務」を通じた金融支援を終了している。新型コロナの感染拡大に対する官民金融機関を通じた事業者の資金繰り支援策について、神田眞人総括審議官(当時)が、令和2年初頭に新型コロナの感染拡大が始まった当時の初動を「新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について」(本誌令和2年8月号)として寄稿しているほか*3、その後2年間の社会経済情勢の変遷と制度改正の経緯について、政策金融課有志が、「新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について~令和2年度後半以降の動向~」(本誌令和4年9月号)として取りまとめて寄稿してきている。*4本稿では、「危機対応業務」の終了を契機に、コロナ禍の中堅・大企業向け金融支援において大きな役割を担ってきた政投銀に焦点を当て、中堅・大企業向けの各種支援策を網羅的に整理し全体像を捉えるとともに、一つ一つの支援メニューの内容について当時の経緯とともに詳述したい。今回の新型コロナの危機対応においては、リーマンショックや東日本大震災といった過去の危機的事態と異なり、「危機対応業務」だけでなく、「特定投資業務」やその他の支援施策等、その時々の事業者の直面する課題に応じて様々なメニューを活用し、工夫を凝らしながら支援を行った点が特徴的であった。本稿においては、そのような点についても深く掘り下げて振り返りたい。なお、本稿は、当時の業務経験、作業記録、公表資料等を元にして、執筆陣が個人として解釈・構成したものであり、政府や財務省の公式な見解を記すものではない。また、本稿に含まれた情報や制度の説明について間違いがありうる。そのような場合、それらは、執筆陣の責に帰すことをご承知おきいただきたい。*52.株式会社日本政策投資銀行についてまずは、政投銀の概要について簡単に触れたい。株式会社日本政策投資銀行(政投銀)は、元々は、第二次世界大戦後に経済の復興を促進するために必要な資金の供給を目的として設立された復興金融金庫をその前身としている。同金庫業務を継承した日本開発銀行(昭和26年設立)と、北海道東北開発公庫(昭和31年設立)が統合して、平成11年に旧日本政策投資銀行(当時は特殊法人)が発足した後、平成20年に「株式会社日本政策投資銀行法」(以下、「政投銀法」という。)の成立に伴い株式会社として設立された政府系金融機関である。大臣官房政策金融課 鳥羽 建/平間 翔太/知田 直樹*1新型コロナにおける中堅・大企業に対する政策金融支援について~日本政策投資銀行を通じた支援の全体像~

元のページ  ../index.html#50

このブックを見る