36 ファイナンス 2023 Oct.服部 国債課1つだけだった当時、職員の数は、今よりも少なかったのでしょうか。齋藤 今だと企画課と業務課2つあわせて70人くらいいると思いますけど、その約半分という感じですね。国債課一つで30人ちょっとだったと思います。服部 それは、当時は国債の発行が少なかったから、職員数が少なかったということでしょうか。齋藤 それは、その後に国債管理政策の改革をやっていくきっかけというか、背景になる部分でもあります。理財局は、企業の財務経理部門が担当しているような仕事をやっています。財務省は財務という名前がついているくらいだから財務をやっていて当たり前だと思うかもしれませんが、理財局の仕事は大きく、資金調達、キャッシュマネジメント、国有財産の管理、それから財政投融資になります。まず、国債の発行に代表されるような資金調達ですよね。それから、国庫課という課があって、国のお金の資金繰り、キャッシュマネジメントと呼ばれるようなことをやっています。資金調達をして、手元資金をちゃんと管理して、お金を払うべきタイミングでちゃんと払えるようにしておく、あるいは無駄な手元の現金をできるだけ抱えないようにする。これは国であっても企業であっても財務部門の大事な仕事の一つですけど、このキャッシュマネジメントというのも理財局の仕事です。国有財産の管理については、債務・負債の管理だけではなくて、資産の側の管理も理財局の仕事になっています。国の財産は大きく分けると2つあり、1つは不動産です。国有地と国有地に建っている建物、この役所の建物もそうですし、あるいは公務員の宿舎もそうです。そういった不動産という国の財産・資産の管理に加え、もう1つ大きいのが、政府が持っている有価証券、株などの管理です。国は、いわゆる政府系金融機関などに出資をしており、政府は出資者になっているわけです。昔国営企業だったものが民営化されたケースもそうです。例えばNTTとかJT、日本郵政など、国がある種直轄でやっていたものが民営化されて企業になっているわけですけど、そういうところの株は1/3ぐらいずつは政府が持っているんですね。そういう政府の株式の持分の管理をしたり、あるいは売るタイミングがあったら売ったりというようなことも理財局の仕事です。理財局の仕事として財政投融資もあります。今の仕組みでは、まず財投債という国債の一種があって、これは財政投融資特別会計が発行する国債のことです。これを出して資金調達をし、調達した資金を政府系金融機関とか、独立行政法人や地方自治体に貸し出すということをやっています。実は大企業も似たようなことを、大企業の財務部門でやっています。グループ・ファイナンスと呼ばれるものです。ホールディングスの親会社が資金調達をして、グループ内の子会社に対してお金を貸しつける。親会社の方が当然大企業なので、信用力が高いから、より低い金利で資金調達ができるわけです。だから親会社が調達をしてあげて、子会社に必要なお金をファイナンスしてあげる、みたいなことをやるわけです。財政投融資は、国、地方公共団体、パブリックセクターの中でやっている、ある種のグループ・ファイナンスという風に考えることもできます。これも理財局の仕事の一つです。もう一度整理すると、資金調達、キャッシュマネジメント、国有財産の管理、さらに、財政投融資。これが理財局の仕事です。理財局の歴史を振り返ると、実は国有財産の管轄は、局が別だった時代があるんですね。服部 何という局の管轄だったのでしょうか。齋藤 「国有財産局」です。私が入った時には既に今の形の理財局でした。ただ、なんで国有財産局の話をしているかというと、当時の理財局はどんな感じだったのかという話、あるいは国債課の位置づけみたいな話に繋がってくるんです。理財局には、局長の下に次長が2人いるんですけれど、その2人の次長の担当は、俗に「旧理(旧理財局)担当次長」といって昔からの理財局を担当する次長と、国有財産の担当次長という形で、当時は2人に分かれていたんです。旧理財局担当次長は何を見ていたかというと、財政投融資と、国債発行の資金調達、あとキャッシュマネジメントです。実はこの中では、財政投融資をやっている部署の方が優位にあったんですね。なぜかというと、さっきお話ししたように、財政投融資というのはパブリックセクターの中のグループ・ファイナンスのようなものです。「第2の予算」という言葉がありますね。税を財源にして主計局が編成する予算の他に、財政投融資がありました。お金を渡す先は政府系金融機関のほか、
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