ファイナンス 2023年10月号 No.695
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齋藤通雄 前理財局長 34 ファイナンス 2023 Oct.服部 最初に、財務省に入省された経緯からお話しいただけないでしょうか。齋藤 私は、学部時代、法学部の第3類という政治コースに所属しており、ゼミでは政治過程論という、政策の意思決定プロセスを研究するゼミに入っていました。日本の政策がどういうプロセスを経て決まるのかについて興味があったんです。就職をする時に、民間企業も回っていたんですが、官庁訪問をしたとこ本インタビューの目的我が国の国債市場の重要な制度は、主に2000年前後に形作られています。もっとも、その際の議論については意外と文献がないのが実態です。そこで、本稿では、国債を専門とする経済学者である服部が、国債の制度改正に深く携わった齋藤通雄氏にインタビューし、それを活字化することで、2000年前後の制度改正の歴史を将来世代に残すことを目的にしています。インタビューそのものは5時間以上に及んだため、これから2回にわたり、インタビューの内容を紹介いたします。本インタビューの活字化等にあたり、東京大学経済学部の安斎由里菜さんと新田凜さんの協力を得ました。ろ、当時の大蔵省の採用担当者が採用してくれることになりました。私が就職したのは今から36年前であり、今とは大分違っていて、霞ヶ関の影響力がより大きい時代でした。その中でも大蔵省であれば、予算や税などを通じて、自分が興味のあった日本の政策の決定プロセスを、裏側から見られて面白いかなと感じました。そういったことが、自分が大蔵省に入った動機です。実は就職する時も、30年以上、公務員として勤めあげるとは正直あまり思っていませんでした。就職して、政策の決まるプロセスをある程度裏側から見られたら、研究者になるか、あるいは政治評論家じゃないですけど、文筆業とか、いずれにせよ政治について研究したり、物を書いたりといった仕事に行ってもいいかなと思っていました。ですが結局37年、定年までいたという感じでしょうか。服部 1987年に入省後、最初の配属は主税局調査課ですね。齋藤 振り出しはそうですね。私が就職して間もなく、中曽根内閣の売上税が廃案になりました。そこから消費税導入にいたるまでの期間が、私が見習いとし前理財局長 齋藤 通雄/東京大学 服部 孝洋齋藤通雄氏に聞く、 日本国債市場の制度改正と歴史(前編)

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