*10) 拙稿:「財務省の政策評価の取り組みについて〜10回目となった平成22年度政策評価書を中心に」「ファイナンス」平成23(2011)年9月号 ファイナンス 2023 Oct. 31*9) 本省・財務局の間の連携・協働の促進に向けた基本的な考え方((1)職員間の日常的な意思疎通、(2)情報・考え方の適格な共有、(3)管理職員のリーダーシップ)を明文化したもの。財務省再生プロジェクト進■報告(2020年6月23日)28頁https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/7352645/www.mof.go.jp/public_relations/■nance/201109c.pdf令和4(2022)事務年度の地方課の取組みについて 重要である。紙媒体での文書で行政をやっていくと、量が膨大となって、その管理がうまくできていないという状況が懸念されている。基本的には、これから電子化に向かっていくので、検索が容易になると思うが、文書管理についてもう一度きちんと見直してみようという問題意識のもと、今回、事務考査にこのテーマを選んだ。今後考査の結果に基づいた改善に取り組んでいくことが期待される。最近のデジタル化の中で、「アジャイル」という言葉が非常によくいわれる。トライアンドエラーを繰り返しながら、方針変更やニーズの変化に機敏に対応するということである。「とりあえずやってみよう、その後不具合があったら直していこう。」ということになる。ややいいかげんだというように思う向きもあるかもしれない。しかし、システム開発は、基本的に永遠に改善が続くものであり、きちっと100%隅から隅まで完璧に確立して仕事をすることは、難しいと言われている。「ベストエフォート」という言葉もある。トライアンドエラーを許す、あるいはベストエフォートという考え方を許すような風土が多少はないと、イノベーションは起こらないと言わざるを得ない。ここで、ホワイトカラーがPC上で行う業務をロボットで自動化するテクノロジーのRPA(Robotic Process Automation)などでは、アジャイル的トライアンドエラーを許容する部分があると思う。そういうところで、特に若い人たちの活気をうまく受け止められれば、非常に素晴らしい。同じ文脈になるが、地域連携も同様で、現場は試行錯誤で思惑と違うこともいろいろあると思うが、その過程で、職員が気付きを得て柔軟な発想を持つ。こうしたことが非常に大切ではないだろうか。コミュニケーション三原則*9については、令和4(2022)事務年度もあらためて幹部も含めて省内への周知に努めた。令和4(2022)事務年度は、アジャイル的あるいは、試行的ということで、月に一度、各財務局長とランチミーティングという形で雑談の機会を設けた。全員参加できなくても可としたほか、資料などを事前に準備するようなものとすると事務的に負担が増してしまう業務になってしまうので、オンラインという特性を生かした軽いタッチで実施した。筆者は、ここ20年来「学習する組織」という言葉を大切にしてきた。この言葉は、経営学の用語で、ベストセラーになった『失敗の本質』の著者1人でもある世界的な経営学者である野中郁次郎氏も使用しているものである。「学習する組織」とは、職員が、環境変化に応じて柔軟に変わっていけるような組織を言う。政策評価担当室長の業務について投稿した本誌2011年9月号の記事の中で触れた*10。基本的にチームであることを前提に、そのすべての構成員が、自立性と協調性をもって環境に適応する強さと、将来の変化に対応する柔軟性を理解し実践することにより、組織全体が学習する能力を備えているということになると言われている。これは非常にすばらしいことであり、財務省も「財務省再生プロジェクト」により、そういう組織を目指して日々苦闘しているものと筆者は理解している。組織人としての筆者の問題意識の根底にはそれがある。令和4(2022)事務年度については、財務局において、「学習する組織」という発想を具現化できないかということが、大きなテーマであった。2.おわりに自明のことではあるが、「パブリックリレーションズ」の日本語訳を「広報」と言う。「広報」という訳からはあまりうかがえないわけではあるが、「リレーション」ということが極めて重要ではないかと考えている。こちらから訴えかけ、何か反応があり、関係性(5) 財務局におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透へ向けて(6)コミュニケーション三原則の浸透(7)「学習する組織」を目指して
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