ファイナンス 2023年10月号 No.695
32/102

*5) 財務省再生プロジェクト *6) 財務省再生プロジェクト 進■報告(2023年6月23日)24頁https://www.mof.go.jp/about_mof/introduction/saisei/index.html進■報告(2023年6月23日)19頁、34頁 28 ファイナンス 2023 Oct.か、機構・定員・予算・人事を担当する係においては、金融庁の担当者からの事前の情報提供・相談を要請しているところである。上述のように、8年ぶりの地方課の業務を行ったが、地方支分部局である財務局では、長い歴史の中で1年間の業務運営のスケジュールは概ね決まっている。したがって、仮に財務局の運営等について「カイゼン」などを行う場合には、人事異動後の夏の間によく構想を練る必要があった。その際に、前回地方課長をしたころに比べての大きな環境変化として、2つが念頭にあった。1つは「マネジメント」である。「財務省再生プロジェクト」や内閣人事局でもこの点を大変重視するようになったと感じていた。「マネジメント」とは、日本語にすると「経営管理」ということになるかと思う。すなわち、人員や組織といった限られた資源を、組織理念に沿って最適に運営していくということである。この考え方が今急速に中央省庁の中で浸透してきており、また、そうあるべきという考え方が非常に強まっており、典型的には研修の強化ということで、財務局でも各総務部長の方々に個別にマネジメント研修を受けてもらうことが始まった*5。もう1つが「ICTの進展」である。個人的には、日本社会は非常に硬いというか、あまり変わらない社会だと思っている。しかし、コロナショックのような外部から大きなショックが来ると、だんだんと波紋が広がっていき、決して元通りにはならないということも起こる。今回のコロナショックは、日本社会に非常に大きな影響を与えたものであると思う。例えば、筆者は、令和3(2021)年6月まで4年間沖縄振興開発金融公庫で仕事をしていたが、従来は原則対面で会議などを行っていたところ、コロナになり、対面が難しくなったため、これに対応するため、沖縄の本店と東京の事務所を繋ぐネット回線が充実され、ネットを活用した会議が増えたなど、大きな変貌があった。日本では、従来型でやっていることは、なかなか変化しないと考えるが、今回のコロナによって、日本社会の硬さというか脆い部分というのがはっきり見えてきたと思う。すなわち、諸外国と比べ、日本のICT化は非常に遅れていることがはっきりした。2000年代の頃は、このICTが業務の効率化に繋がるかどうかということは、効果の分析などはどうしても後追いになるので、はっきりしていなかった。ところが実際には、そうした疑問に終始し、ICT化しても効率や生産性が上がらないのではないかなどと言っている間に、諸外国は真剣に取り組んでいて、日本は非常に立ち遅れてしまった。失われた20年を取り戻すため、政府は、デジタル庁を設置するなど一生懸命取り組んでいるが、最近の状況をみていても、キャッチアップするのには相当な困難に直面していると思う。財務省本省は令和4(2022)年2月に省内のLANシステムがクラウド化された。クラウド化されたことでMicrosoft365のアプリが使えるようになった。今、財務省のDXを進めるために若手・中堅職員による「財務省DXプロジェクト」が進行している*6。財務局においても令和7(2025)年に新しいLANシステムに移行してクラウド化を予定している。諸外国では、アプリをうまく活用することにより、行政の業務効率化が進んでいると言われているので、地方課・財務局においては、先行する本省での取組みを踏まえつつ、十分準備をして進めていく必要がある。ここで、ICT化について、従来の手続きと同じようにやっていては全く効率化が進まないと思う。アプリの特性に応じて、これまでの業務のやり方を変えないと効率的にならない。ところが、従来やっていることを変えることは、前述のとおり、日本社会の特性もあって難しいところだ。しかし、今回クラウド化してICTが本格化する場面において、思い切った「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」(BPR)を進める必要があると考える。よくシステムの話というのは、そのシステム担当者に丸投げということが起こりがちであるが、これを乗り越えないと業務の効率化は進まない。マネジメントを担当する部門が強力に推進する必1. 令和4(2022)事務年度の地方課の課題

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る