ファイナンス 2023年10月号 No.695
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税務手続のデジタル化や業務におけるデータの活用など、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(デジ※「課税・徴収事務」以外の税務データ活用税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-税務手続のあるべき姿の実現*納税者情報の取扱いや情報セキュリティの確保にも万全を期す。*デジタルに不慣れな方も含めたあらゆる納税者に対して効率的で使い勝手の良いサービスを提供することを目指す。*将来像実現に向けて、「内部事務のセンター化」やシステムの高度化、人材育成等のインフラ整備にも取り組む。事業者のデジタル化促進納税者の利便性の向上<“納税者目線”の徹底>課税・徴収事務の効率化・高度化<“データの活用”の徹底>組織としてのパフォーマンスを最大化日常使い慣れたデジタルツールから簡便に手続できる環境構築あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会タルを活用した、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し)に取り組みます。事業者の業務のデジタル化を促進することにより、税務を起点とした社会全体のDXを推進します。国税庁は、「適正・公平な課税・徴収の実現」に加え「社会全体のDX推進」の観点からも社会に貢献します。税務行政の将来像「適正・公平な課税・徴収の実現」に加え「社会全体のDX推進」の観点からも社会に貢献申告(納付・還付)、年末調整の簡便化申請等の簡便化/自己情報のオンライン確認検索性向上/相談の高度化デジタル関係施策の周知・広報課税・徴収の効率化・高度化(AI・データ分析の活用)(オンラインツール等の活用)関係機関への照会等のデジタル化税務データの学術研究目的活用他省庁との連携・協力関係団体等との連携・協力特に必要性の高い分野や悪質な事案等に重点化租税回避富裕層の適正課税消費税の適正課税大口・悪質事案Ⅰ目指す姿と取組の方向性UX: ユーザーエクスペリエンスの略。あるサービス(システム)を使う過程で起きるユーザーの知覚及び反応。(ニーズが満たされることで)達成感を感じたり、システムを快適に利用できる。図1 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション −税務行政の将来像2023− 16 ファイナンス 2023 Oct.や請求・支払、会計・経理、税務処理といった、上流からの事務処理を一貫してデジタル処理することが可能となれば、税務面でのデジタル化の進展はもちろん、事業者側として処理の正確性の向上や生産性の向上等といった効果が期待されます。このように、今回公表した「将来像2023」では、国税庁の本来の任務である「適正・公平な課税・徴収の実現」といった観点に加えて、「事業者のデジタル化促進」を通じて「社会全体のDX推進」の観点からも社会に貢献していくことを示しています。策を説明していきます。まず、「納税者の利便性の向上」については、納税者利便の向上の観点から、“納税者目線”を“徹底”し、各種施策を講じていくこととしています。具体的には、納税者が行う一連の手続全体を俯瞰し、最適なUI/UX(※)の改善を図っていくため、典型的な納税者像(ペルソナ)を複数設定し、そのペルソナが税務手続を行う際の流れと、その流れの中での経験である「カスタマージャーニー」を具体化することにより、現状の問題点を可視化した上で、各種施策を3.納税者の利便性の向上ここからは、個別の柱に沿って、簡単に具体的な施検討していく方針を示しています。今回公表した「将来像2023」においては、35歳の給与所得者の申告手続を例にし、カスタマージャーニーを模式的に示した上で、手続全体の将来像を示しています。以下、「納税者の利便性の向上」に関連する主な個別施策について説明します。(※)UI : ユーザーインターフェイスの略。画面や音声入出力、キーボードなど、システムにおいてユーザーに対する情報提供や操作手段に関係する要素のこと。確定申告を行う納税者の方々は、これまで様々なデータを自身で入力する必要がありました。今般の「将来像2023」では、今後、申告納税制度の下で、確定申告に必要なデータ(例えば、給与や年金の収入金額、医療費の支払額など)を個別に入力することなく、自動的に申告データに取り込むことで、数回のクリックやタップで確定申告が完了する「日本版記入済み申告書」(書かない確定申告)の実現を目指すことを明確化したところです。(1) 「給与情報等の自動入力の実現」(申告手続の簡便化)

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