ファイナンス 2023 Oct. 15 1.はじめに国税庁では、令和5年6月に「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」(以下、「将来像2023」といいます。)を取りまとめ、これを公表しました。経済社会のデジタル化・国際化等により税務を取り巻く環境が著しく変化する中で、国税庁として、引き続き、限られた人員・予算の下で「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という使命を的確に果たしていくためには、その時代に即した税務行政のあるべき姿(グランドデザイン)について税務行政全体を俯瞰して描いた上で、デジタルを前提として、そのあるべき姿の実現に向けた取組を着実・迅速に進めていくことが不可欠だと考えております。近年、新型コロナウイルス感染症への対応や生活様式の変化も相まって、税務を含むあらゆる分野でデジタル化の波が急速に広まっていますが、特に税務の分野においてデジタルの活用が進展すれば、税務手続が簡便になるだけではなく、単純誤りの防止による正確性の向上や、業務の効率化による事業者の生産性の向上等を通じ、事業者を始めとした様々な皆様にメリットをもたらすことが期待されます。また、国税庁としましても、事務処理の効率化や得られたデータの活用等を通じて、課税・徴収事務の更なる効率化・高度化を進めることができることになります。国税庁では、こうした大きな意義のある税務行政のDXについて、目指すべき方向性や最新の取組内容を発信し、多くの方々と共有することによって取組を更に加速させるという観点から、今般、「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」(令和3年6月)を改定し、「将来像2023」として公表することとしたものです。今回は、この「将来像2023」に掲げられた、主だった施策等についてご紹介します。一つ目の「納税者の利便性の向上」については、「納税者目線」を徹底し、スマートフォン、タブレット、パソコンなどといった納税者が使い慣れたツールを使用して、簡単・便利に手続を行うことができる環境を整備するなど、税務手続のあるべき姿として「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」の実現を目標とするものです。次に、「課税・徴収事務の効率化・高度化」については、業務におけるデータ活用の徹底を通じて、組織のパフォーマンスの最大化を目指すというものです。具体的には、業務においてAIやデータ分析、オンラインツール等を活用するほか、地方公共団体や金融機関等、他の機関への照会などもデジタル化を進め、業務を効率化していくことにより、特に必要性の高い分野や悪質な調査・徴収事案等にマンパワーを重点的に配分することを可能とし、組織としてのパフォーマンスを最大化することを目指すこととしています。最後に、今回新たに追加した「事業者のデジタル化促進」については、事業者に役立つデジタル関係施策の網羅的でわかりやすい周知・広報や、関係団体や関係省庁等とも連携・協力したデジタル化の機運醸成に向けた取組を実施するなど、国税庁として、事業者のデジタル化を促進する施策に積極的に取り組んでいくことを明確化しました。これまで、国税庁は「税務手続」のデジタル化を促進することに注力してきましたが、税務手続のみならず、事業者が日ごろ行う受発注2.概要ここでは、「将来像2023」の全体像としまして、デジタル化推進に当たっての3つの柱、「納税者の利便性の向上」、「課税・徴収事務の効率化・高度化」、「事業者のデジタル化促進」についてご紹介します。国税庁 長官官房 デジタル化・業務改革室長 大柳 久幸税務行政のデジタル・トランス フォーメーション(解説記事)
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