ファイナンス 2023年9月号 No.694
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ファイナンス 2023 Sep. 5えて、グループで意見交換し、予算案を作るのですが、政府の仕組みや社会について考える一助になっているのではと思っています。伊沢拓司さん なるほど、場も多様ですね。こうした場では、従来の制作物よりかなり内容を厳選してある「うんこドリル」コラボも効いてきますよね。もう一つ、財務省の広報のネックとして感じる部分として、題材が難しい点があると思います。頑張って取り組んでいることを説明すればするほど込み入った話になるので伝わりづらくなっていきます。国民の皆さんにまず理解してほしい、財務省の大きな役割とは何になりますか。青木官房長 各省庁は、社会保障、教育、インフラ整備など、この分野で困っている人を助ける必要がある、この分野で投資する必要がある、といった立場で、政策とお金の使い道を考えます。他方、政策の元手になる税金を負担している納税者の目線で、予算や制度を見るのが財務省の仕事だと考えています。また、予算の一部を借金に頼る以上、どこかで将来世代の負担も発生するため、今は投票できない将来世代の視点での意見も言っています。耳あたりのよい意見ではないかもしれませんが…。こうしたそれぞれの立場から議論を戦わせて予算や税金の制度を作り、国会の議決という形で、オーナーたる国民の合意を得ることになります。伊沢拓司さん ある意味、財務省は行政の中で国民に一番近い立場、各省庁と国民の間に立つ存在だと思います。予算を通じてお金の使われ方を監視し、バランスをとっているわけですからね。国民のために行政を管理するという在り方が国民からの親近感につながると良いですね。青木官房長 そうやって言っていただけると嬉しいです。職員によく言っているのですが、霞が関以外の色々なところ、例えば同級生との集まりや自分の母校に積極的に出て行って財務省や自分の仕事について話をしてくれば、そこで様々なフィードバックを貰えるし、財務省について理解して貰える良い機会になると思います。また、より幅広い人に届けるという点で、今回の対談企画のようなことも試行錯誤しながらやっていければと思っています。伊沢拓司さん ちなみにそうした国民に近い官庁である財務省がしっかり働いているかどうかを知るためには国民としてはどうすればいいのでしょうか。青木官房長 先ほどのパンフレットやマスメディアなどにはいろいろ情報が出ていて、関心を持って検索していただければヒットすると思います。ただ、通勤電車の中で新聞を読んでいる人はごくわずかで、皆さんスマホを見ていますよね。テレビ離れも進んでいると聞きます。こうした中で、どうすれば私たちのコンテンツを見てもらえるかよくよく考える必要があると思っています。伊沢拓司さん 場とコンテンツでいうと、今は「場」、アクセシビリティを上げる必要がありそうですね。国民の皆さんに関心を持ってもらうことも大事ですが、おっしゃるようにきっかけを作れるよう、財務省の皆さんも国民側へ歩み寄るような対応も必要ではないでしょうか。青木官房長 そうですね。自分ごとという意味では、自分たちがどれだけ税金を払っているか、その行き先がどこかを具体的に想像してもらうことも大切かと思います。私が大学等で授業をする際に導入部分でお話しするのが、皆さんが何年か後に就職したら給料がいくら、そこから税、年金医療・雇用の保険料が天引きされて、家賃や生活費がこれだけかかり、こういった生活になる、生活費の8~10%は消費

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