ファイナンス 2023年9月号 No.694
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写真 2 伊沢 拓司さん(株式会社 QuizKnock CEO) ファイナンス 2023 Sep. 3したので、行政についてある程度わかる部分もあると思っていますが、本日は、率直に少しかみ砕いてお話しできればと思っています。よろしくお願いします。青木官房長 大臣官房長の青木です。こちらこそ貴重な機会をいただきありがとうございます。税と財政については、私たちが互いに支え合う政府という仕組みの中で、そのメンバーの会費として税を負担して、見返りに行政サービスを受ける、言い換えると受益と負担を表しているものです。海外では、同じ国でも住む場所によって公共サービスや負担の程度が大きく異なることがあり*1) 財務省ホームページ(https://www.mof.go.jp/public_relations/publication/index.htm)税と財政の役割について伊沢拓司さん ものすごく基本的なところからお伺いさせてください。私は大学で地方財政について勉強して、ブライスの言う「民主主義の学校」的なことを学んできたのですが、地方を見ていても税を適切に集めるということは非常に難しいことだと感じました。また、大人になってから各地を仕事で回るうち、税ってこうしたところに使われているんだと驚くことも多くありました。こうした税と財政の役割についてお話しいただけますでしょうか。ますので、「自分がそこに住む」という選択自体が投票行動であり、民主主義の基本になっているのだと思います。一方、日本では、全国どこでも一定水準の行政サービスが受けられる制度になっていて、それ自体は日本のすばらしさの一つであると思いますが、どこに住んでいても一定のサービスを受けられることによって受益と負担の関係についての認識が薄くなっている部分があると思います。伊沢拓司さん 日本では受益と負担を感じづらいという点はまさにその通りだと考えています。私も社会保障の広報に関する会議のメンバーでしたが、受益と負担が感覚的に結びついていないなと感じました。その点を認識してもらうには、いかに「自分ごと」にするかが課題だと考えます。そのためには税や財政について、身近にあるいはリアルに国民に感じてもらう必要があるのだと思いますが、財務省ではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。青木官房長 色々な方に向けて財政や税に関するパンフレットを作ってHPに掲載しています*1。医療、学校、警察、消防など身近な行政サービスを紹介し、具体的に一人当たりでかかる金額を紹介するなど、様々な工夫をしています。しかし、こうしたものはなかなか手に取ってもらえていないと認識していて、税や財政についてあまり関心を持ってもらえていないのではないかと思います。税と財政は、一人では困ってしまう場面での社会全体の助け合いの仕組みだと思いますが、そこに参加している一人ひとりが費用を負担すると同時に、何にいくらお金を使うか、誰がどのように費用を負担するのかについて口を出していくことが民主主義だと思いますし、そういったことをもっと「自分ごと」として受け止めていくことが

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