ファイナンス 2023年9月号 No.694
65/74

銘板に「呉海軍工廠」や「明治三十九年」の文字大砲引渡しの様子(令和5年6月8日) ファイナンス 2023 Sep. 61名称を踏まえると、旧海軍の装備品である可能性が高いことから、更に調査や検討を重ね、北海道財務局が国有財産として大砲を引き受けることとしました。大砲の引き取り先の検討にあたり、地元江差町のほか、大砲の砲身に「呉海軍工廠」の銘板が貼付されていることを踏まえ、呉市の歴史や戦前・戦後の造船技術等を主な展示内容としている、呉市(海事歴史科学館(愛称:大和ミュージアム))に情報提供を行ったところ、呉市から「貴重な資料であり当該大砲を取得したい」との意向が示されました。これを受け、会計法令に則った手続きを経て、令和5年5月22日に呉市と売買契約を締結し、同年6月8日、大砲の保管先である江差港において、報道機関など多くの方々が見守る中、大砲の引渡しを行いました。3.大砲の売買契約を締結・引き渡し引き受けた大砲の取扱いを検討した結果、大砲は本来の用途を失っており、また、国において行政目的で使用するものではないことから、当事務所では売却する方針を固めました。その後、大砲は北海道から広島県までの長い旅路を経て、同年6月12日、呉市に里帰りし、大和ミュージアムに無事到着しています。江差町においては、陸揚げから引渡しまでの間、江差港の倉庫内に保管していただいたほか、現地に寄せられる様々な照会等への対応にご協力いただきました。また、呉市においては、大砲の取得の検討や大砲の現物確認のためご来道いただくなど、積極的にご対応いただきました。エピソードとして、6月8日の引渡し当日、呉市・江差町・当事務所の3者で打合せを行った内容の一部を、ご紹介いたします。江差町からは、○陸揚げ当時、大砲の取扱いをどうするか悩んでいたところ、当事務所が率先して対応したこと○大砲の保管を通じ呉市とつながりができたことなどについて、感謝の言葉がありました。呉市からは、○大砲の引き取り先の検討にあたり、(財務局から呉市へ)情報提供があったこと○大砲が屋内で大切に保管されていたことなどについて、感謝の言葉がありました。このほか、江差町からは、同町の開陽丸記念館の参考とするため、大和ミュージアムでの資料の展示や保存等について、呉市に今後相談したいとのやりとりがあったことなど、和やかな雰囲気の中、打合せを終えました。4.地域との連携・協力当事務所は、大砲の陸揚げから引渡しに至るまで携わってきましたが、地域との連携・協力の大切さや心強さをあらためて感じることができました。5.おわりに以上のとおり、無事に呉市(大和ミュージアム)へ大砲を引渡しすることができましたが、ここに至るまで多くの関係者の皆様からご意見やご協力をいただきながら、処理方針について何度も検討を重ねてきました。その結果、呉市に引渡しできたことは、大砲の歴江差町

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る