ファイナンス 2023年9月号 No.694
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〈バンコク市街の渋滞の様子〉写真バンコク渋滞の様子*17) バンコクには5,556拠点、80,657名が登録(タイ運輸省(2022年12月末))。この公的に把握されるバイタクとは別にGrab等のバイタクも存在。*18) いわゆるギグ・ワーカーですが、遠藤環教授(埼玉大)によると、都市化の進展と渋滞の悪化に伴い、公的部門だけでは対応できない、ニッチ市場を狙ったサービス職種創出の成功例。自営業職種の重要な生計手段になっています。 50 ファイナンス 2023 Sep.コラム3最強のモビリティ=バイク?バンコクでは(東南アジア諸国ではあるあるですが)、中心部の渋滞が日常茶飯事です。経済成長に伴い、タイ人の自動車保有率が高まっている反面、必要な道路整備や公共交通機関が十分でないことなど、原因は様々あるようですが、通勤時間帯や雨が降っている時は特にひどく、用務先に遅れてお詫びする、あるいは先方の待ちぼうけを食うという事態がままあります。渋滞時の救世主は、オレンジ色のジャケットを着たバイクタクシーです。一定の距離ごとに“バイタク”たちが集合しており、お願いすると動かない車の間を縫いながら、安価にかつスピーディに運んでくれます*17。また、バイタクはGrabアプリでも呼び出すことができ、同アプリでは他にも食品・日用品のデリバリーも便利で、筆者も重宝しています*18。雨季の長いタイで、雨が多いことを考慮すると、救世主バイタクでも「最強のモビリティ」の称号までは渡せないですね。が、皆様にタイという国について、少しでも興味・関心を持っていただけましたら幸いです。コップンマーカップ。*17*18 7 7 おわりに本稿では、タイが先進国入りを目指す上で、ネックとなるであろう経済・財政面での課題、また現行体制からの変革を願うタイ国民の熱い思いなど、経済・政治両面での様々な課題について紹介しました。また、これらの課題が、これまでタイ経済の発展に貢献してきた日本企業に対しても、今後の投資判断や国際競争への影響を生じさせています。まさに今が、タイの発展の歩みが今後も進むのか止まるのかという、分岐点の時期にあると感じるところです。他方で、「微笑みの国」タイでは、人々が常に笑顔で迎えてくれ、(良くも悪くも)小さいことは気にしない、人を明るく元気にしてくれる活力であふれています。この素晴らしい文化はこれからも変わらずにいて欲しいと強く願います。タイの魅力を本稿で語り尽くすことは不可能です

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