ファイナンス 2023年9月号 No.694
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FOREIGNFOREIGNWATCHERWATCHER 1 1 はじめにはじめまして、サワディカップ。筆者は現在、バンコクにある在タイ日本国大使館に財務アタッシェとして勤務しています。2022年6月の赴任以来、約1年3ヶ月が経過しました。赴任時には、まだコロナ禍の入国規制が若干残っておりましたが、やがてすぐ撤廃。その他の行動規制もちょうど廃止され、幸いにも、自ら足を運び、政府・国際機関関係者や日系・非日系の企業の方々とネットワーキングする機会に恵まれています。 2 2 タイ概観まず、タイという国の基本情報について。タイはASEAN・メコン地域の中心部に位置し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアと国境を接しています(ミャンマーとの国境は2,400km以上)。国土面積は約51万km2(日本の約1.4倍、ASEAN10カ国ではインドネシア、ミャンマーに次いで3番目の大きさ)、人口は約6,609万人(日本の約2分の1)となっています。国*1) 本稿は全て筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織を代表するものではありません。 40 ファイナンス 2023 Sep.バンコク市街に出れば、多くのタイ人や観光客の活気であふれ、至る所で屋台が見つかり、道には常と言ってよいほど車の渋滞が発生しています。しかし、コロナ禍にはロックダウンも経験し、今では考えられないほど街はがらがらだったようです。経験者から聞くところ、現在の状況はコロナ前か、あるいはそれ以上のようで、「これぞタイ」ということなのだと理解するようになりました。また、タイ人は本当に笑顔で優しく、例えば、いつも挨拶では手を合わせて敬意を示したり、子供にも優しいのでどこへ行っても子連れを優先してくれる・・・。挙げたらきりがありませんが、そんなタイ人の明るさや人々の活気は、日本の生活では感じることがないものです。さすがの「微笑みの国」。こんなに過ごしやすい国はないと感じます。そんなタイは、近年ぐんと経済成長を遂げており、首都バンコクでは高層ビルが建ち並び、世界中のあらゆるモノがほぼ入手可能、物価・地価は高めの水準。ASEANの優等生というイメージそのままに、都会での便利で高度な暮らしにも驚かされますが、他方で「中所得国の罠」から抜け出せずにいるなど、構造的な経済的課題を抱えています。また、今年5月には下院総選挙が実施されましたが、野党急進派が熱烈なタイ国民の支持を背景に、親軍政党による現行体制への挑戦を行い、大勝するという出来事となりました。しかし、本稿執筆中の8月下旬に親軍政党と連立を組んだ第2党から首相選出がなされ、社会・経済へ与える影響が懸念されている状況です。実は、まさに今がタイという国の今後が左右される、経済・政治両面の分岐点なのではないかと感じます。本稿では、タイの最近の政治・経済情勢に関するホットトピックスと現状をご紹介しながら、筆者がなぜそう感じるのか、ぜひお伝えできればと思います*1。もしかしたら、皆さんのタイのイメージが変わるかもしれません。在タイ日本国大使館二等書記官 和田 直之海外ウォッチャー「微笑みの国」タイ政治・経済のいま ~人・車・活気があふれる国~

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