ファイナンス 2023年9月号 No.694
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8,000億円7,000億円6,000億円5,000億円4,000億円3,000億円2,000億円1,000億円2006年4月   なお、2013年10-12月期からは、残存5~15.5年及び残存15.5~39年を区切りとしています。また、2014年4-6月期以降は、(出所)財務省「債務管理リポート」リーマン・ブラザーズ破綻(金融危機の深刻化)発行規模が小さい過去の20年債に対象を絞り込み、構造的に流動性が不足しているゾーンに対する流動性向上策として機能。様々な要因により発行後に流動性が低下している銘柄に幅広く機動的に対応するため、対象範囲を残存6~29年に拡大。残存11~16年(20年債のみ)2008年4月10月11月39年を区切りとしていました。残存5~15.5年においても30年国債が対象に加わっています。日本銀行「量的・質的対市中16.9兆円の国債増発残存15~29年(20・30年債)注2残存16~29年(20・30年債)注1残存6~15(16)年(10・20年債)注12009年7月金融緩和」導入国債市場の流動性の低下に対応するため、対象範囲を新規発行銘柄を除く残存5年超の全銘柄に拡大。残存15(15.5)~39年(20・30・40年債)注2残存5~15(15.5)年(10・20・30年債)注22014年4月2015年4月(注1)2008年度は、残存6~15年及び残存16~29年、2009年4-6月期は、残存6~16年及び残存16~29年を区切りとしていました。(注2)2009年7-9月期から2013年4-6月期は、残存5~15年及び残存15~29年、2013年7-9月期は、残存5~15年及び残存15~2013年4月図表11 流動性供給入札の制度の変遷(発行額等の推移)*8) 国債市場特別参加者会合(第63回)では、出席者から「残存5年以下のゾーンは、需給がタイトで投資家のニーズに対応できていない状況であるため、ぜひ対象に追加してほしいと考えている。同ゾーンの実施額としては、年間1.2兆円程度から始めるのがよい。スケジュールについては、残存5-15.5年ゾーンを毎月実施し、残存1-5年及び残存15.5-39年ゾーンを隔月で実施することを希望する」等と指摘がされています。その次回の国債市場特別参加者会合(第64回)では、理財局より「11月の本会合において、実際に導入する場合の具体的論点についてご議論いただき、更に本会合に先立ち事前に皆様のご意見をお伺いしたが、残存5年以下のゾーンの需給は引き続きタイトであり、同ゾーンに対象を拡大することを希望する意見が多かったものと認識している」と説明されています。*9) 国債市場特別参加者会合(第64回)において理財局より、「ゾーン区分については、既存の2ゾーンに新しいゾーンを追加して3ゾーンで実施する方法と、対象年限を1年まで拡大して2ゾーンのまま実施する方法とが考えられる。ただ、2ゾーンで実施する場合、入札の特性を考慮すると、先物取引との関係での需要が高い残存6-7年の銘柄が落札されにくくなるおそれがあると考えられる。そのため、残存1年超5年以下、残存5年超15.5年以下、残存15.5年超39年未満の3ゾーン制とする」と説明されています。 ファイナンス 2023 Sep. 27とする流動性供給入札は毎月行われていますが、残存1年~5年と15.5年~39年のゾーンは、隔月で実施されています。図表10が2023年5月の入札になります。この時は残存5年~15.5年のゾーンに加えて残存1年~5年のゾーンが対象となっていますが、残存15.5年~39年のゾーンは対象となっていません。ここまで現行の制度概要について説明してきましたが、流動性供給入札については、財務省による制度改正が積み重ねられてきました。以下ではこれまでどのようにこの制度が拡充されてきたのかを概観します。流動性供給入札が開始されたのは2006年4月で、当時は残存11年~16年の20年国債についてのみ、毎月1000億円発行されていました(図表11)。その後、2008年4月に対象となる年限が拡大され、残存6~15年及び残存16~29年の二つのゾーンについて発行が行われるようになりました。発行額と対象範囲はこの後も徐々に拡大していますが、毎月2回という入札回数はこの頃より変わりありません。そして、2016年には、流動性の維持・向上を図ることを目的として残存1~5年が新たなゾーンとして対象に追加されています。当時、流動性供給入札の対象外だった残存5年以下の国債も需給がタイトであるとの指摘が市場参加者からなされていました*8。現に流動性供給入札による発行が残存5年から6年の銘柄に集中するなど残存期間の短い銘柄への強い需要の兆候も見られました。そういった状況の中で、図表12のとおり、残存1年~5年の銘柄も対象とする形へと制度変更が行われました。その際、従前から行われていた残存5年~15.5年ゾーンの対象銘柄を拡大する(残存1年~15.5年で一つのゾーンとする)案も検討されていましたが、残存期間の短い銘柄を同じゾーンとして扱うと、国債先物取引の受け渡し銘柄としての需要がある残存7年程度の国債(いわゆるチーペスト)が発行されにくくなる恐れが懸念されました(国債先物の商品性やチーペストについては「国債先物入門」(服部, 2020)を参照してください)*9。そのため、残存1年~5年は、独立した3つ目のゾーンとして、新たに入札の対象となりました。4.その他の論点4.1 これまでの制度改正の流れ

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