ファイナンス 2023年9月号 No.694
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投資家財務省国債国債国債を販売代金の支払い流動性供給入札で当該国債を発行(証券会社は流動性供給入札で当該国債を取得)国債国債入札予定日6月1日(木)10年利付国債(第370回)6月2日(金)国庫短期証券(3ヶ月)(第1160回)6月6日(火)30年利付国債(第78回)6月8日(木)国庫短期証券(6ヶ月)(第1161回)6月8日(木)流動性供給入札(残存期間5年超15.5年以下)6月9日(金)国庫短期証券(3ヶ月)(第1162回)6月13日(火)流動性供給入札(残存期間15.5年超39年未満)6月15日(木)国庫短期証券(3ヶ月)(第1163回)6月19日(月)国庫短期証券(1年)(第1164回)6月22日(木)5年利付国債(第158回)6月23日(金)国庫短期証券(3ヶ月)(第1165回)6月27日(火)20年利付国債(第184回)6月29日(木)2年利付国債(第450回)6月30日(金)国庫短期証券(3ヶ月)(第1166回)証券会社証券会社レポ市場で資金の受け取り流動性供給入札で得た国債を返却借入国債国債入札対象国債等レポ市場レポ市場図表3 証券会社が国債を借り入れて国債をショート図表4 流動性供給入札でショートした銘柄を取得してショートをカバー図表5 入札カレンダー(2023年6月) 24 ファイナンス 2023 Sep.このようにして構築されたショートのポジションを解消するうえで、将来的に当該国債を調達する必要があるのですが、流動性供給入札があれば、財務省から購入することでショートのカバーができることになります(図表4がイメージ)。これは一例になりますが、流動性供給入札があることで、プライマリー・ディーラーはマーケットメイクをより行いやすくなっているといえましょう。流動性供給入札に類似した制度として銘柄統合(リオープン)という制度があります。これは毎月行われる国債の発行において、毎回異なる銘柄を発行するのではなく、前月と同じ銘柄を発行するという発行方法です。例えば、毎月10年国債を新しく発行する場合、1年間で12銘柄生まれてしまうため銘柄ごとの発行額が小さくなってしまいます。これに対して、リオープンは、同一の銘柄を複数回発行することで銘柄ごとの発行量・流通量を増加させ、流動性を高めることを企図しています。流動性を向上させるという観点でいえば、リオープンと流動性供給入札は類似した制度といえます。財務省も両制度を国債市場の流動性の維持・向上を図るという共通の目的を持つ制度と整理しています。もっとも、リオープンは、新発債の段階で銘柄ごとの流通量を増加させて流動性を高める措置であるのに対し、流動性供給入札は流動性が低下した既発債を追加的に発行することで流動性を回復させる制度であり、目的は同じですが異なるアプローチをとっているものと整理できます。ここまでは一般的な説明をしてきましたが、ここからは制度の概要を掴むため、具体的な事例を用いて流動性供給入札を考えてみます。まず、図表5は2023年6月の入札カレンダーですが、これを見ると流動性供給入札が月に2回実施されていることがわかります。具体的には、6月8日に残存5年~15.5年の国債、6月13日に残存15.5年~39年の国債が流動性供給入札の対象となっています。2.3 銘柄統合(リオープン)との比較3.流動性供給入札の実際の流れ3.1 入札の対象

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