ファイナンス 2023年9月号 No.694
17/74

*1) 政策金融に係る予算について、補給金制度の導入以前(昭和40年まで)は、出資金を大蔵省予算として計上していたようである。信用保険事業については、昭和33年の中小企業信用保険公庫の設立以来、継続的に出資金が措置されているところ、所管(予算計上先)について、特段の変更をする理由がなかったため、現在に至るまで、財務省が予算要求している。*2) 信用補完制度に係る予算措置のうち、(1)様々な信用保証を引き受ける信用保険制度(公庫保険)への予算措置は、その基盤となる予算措置であり、かつ、(2)公庫保険へは、災害対策等の面から補正予算等において、多額の追加予算措置が行われる傾向にあるところ、信用保険事業の基盤的な予算措置にどの程度の予算を要しているのかということを端的に示すには当初予算が適していると考え、ここでは、公庫保険への当初予算を記している。また、公庫保険への当初予算全てが、常に財務省計上であるとは限らないものの、その大宗が財務省計上(例えば、令和4年度当初予算の場合、公庫保険への出資金のうち、財務省分が約99.6%(471.2億円/473.2億円)となっていることに鑑みれば、財務省計上分で、概ねの予算措置傾向が把握可能と考えているところである。1日時点のものとした。なお、意見に亘る部分は筆者個人の私的見解であり、政府や財務省の公式見解ではない。また、ありうべき誤りは、全て執筆者個人に帰属するものである。ファイナンス 2023 Sep. 13大臣官房信用機構課地震再保険係長(前 政策金融課政策金融第2係長) 中川 忠明そこで今回は、残る予算の面から捉えることとし、また、今回を含めて計4回の内容を踏まえて、最後に信用補完制度について、一つのまとめを述べることとしたい。(注)  引用している条文等は、特段断りがない限り、令和5年4月勿論ながら、財務省が信用補完制度に係る全ての予算を計上しているわけでは無い。例えば、経済産業省にて信用保証協会の損失を補填するための補助金等も講じられている。しかしながら、その土台となる予算は財務省で計上されているというのが、この信用補完制度に係る予算措置を解するうえでの鍵である。1.はじめに第1回及び第2回までで、概ねの制度創設の背景・流れについて述べ、また前回(第3回)においては、信用補完制度がどのようにして運用されているのかという点について、法令・制度と予算の両面のうち、前者について述べた。2.信用補完制度の仕組み〜予算措置〜法令などの制度運営面では、本稿の第3回で述べているように、中小企業政策という観点からも経済産業省が主となっている。では、その実施のための予算措置はどうなのかというと、少し先に結論を述べてしまえば、主に財務省が、信用補完制度の土台となる予算(株式会社日本政策金融公庫の信用保険事業(以下「公庫保険」という。)の財務基盤を強化するための出資金)を計上する形となっている。では具体的にはどのような予算措置が講じられているのか。以下、ここからは財務省計上予算である公庫保険への出資金を軸に、詳細を述べていくこととしたい。(予算額)まず金額面では、毎年度多額の予算措置が講じられている。例えば、令和5年度当初予算の場合、先述の出資金として、467億円を財務省にて計上しているところである。なお、公庫保険はその成立以来、上記のように財務省にて大方の予算(出資金)を計上する形となっており*1、過去5年度間(令和元年度から令和5年度)の当初予算では、平均して、毎年度約459億円が財務省にて計上されてきた*2。(事業規模)では、公庫保険が保険を措置出来る金額は、上記の予算額なのかというとそういうものではない。この予算措置は、公庫保険がその保険事故によって負ってしまう財務基盤の毀損に耐えられるよう、財務基盤の強化を行うものであるから、実際にはそれを遙かに上回る保険対象額が存在するわけである。正確性を犠牲にして、敢えて単純化して述べてみたい。例えば、100の保険額があるとして、10%が保険事故を起こすとするならば、10の予算措置をしておけばその事業損失(財務基盤の毀損)に公庫保険は耐えられる。それは裏を返せば、10の予算措置で100の保険額を実現できるということであるから、予算は信用補完制度の解説~主に信用保険制度の観点から~(Ⅳ)

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る