ファイナンス 2023年9月号 No.694
11/74

*3) 東京財団政策研究所 加藤創太「財政問題について経済学者と国民の意識はどう乖離するのか「経済学者及び国民全般を対象とした経済・財政についてのアンケート調査」の紹介」 ファイナンス 2023 Sep. 7えづらさが問題かなと。税金に詳しいフットサル仲間にはみんな前のめりで税の話を聞きます。みんな税金に興味はある、でもわかりづらい。わからないのに、取られてはいる、かつそれを訂正するものがないから不満が募るんじゃないかなと。これを自己責任で片付けてはいけないですよね。「広報を出してますよ」だけでなく、わからない人の生活圏内に溶け込む形での広報が求められると思います。SNSや地域コミュニティは活路ですね。YouTuberが自分の収入を公開する動画がすごい人気ですが、例えば高額納税しているYouTuberなどが給与明細や源泉徴収を公開する際に、「税金高いけど、これは社会保障に使われているからなあ」とかつぶやいてくれたら、影響はありそうですがそううまくはいかないですね(笑)。青木官房長 ちなみに、これは東京財団の調査*3で経済学者と国民の財政に関する認識をアンケートしているものですが、国の赤字を問題視している方はどちらも6割を超えていますが、その原因については、経済学者の7割が「社会保障費」と答えているのに対し、国民は7割が「政治の無駄遣い」と回答しています。経済学者と財務省は同じような認識なので、このギャップは、国民の皆さんに受益と負担の関係について考えてもらうための私たちの努力がまだ十分でないことを表しているのかなと思います。伊沢拓司さん この調査も非常に面白いですね。ただ、社会保障費は対立を生むテーマなので直視したくない人もいると思います。例えば、社会保障費が社会の重荷になっているということが「生きづらい」と思ってしまうお年寄りや、「どうせもらえない」と捉えている若者など、ネガティブになりがちです。事実を伝えれば解決、というところから一歩先に進みたいですね。青木官房長 社会保障は個人個人でみると得した損したという議論があるとは思いますが、社会全体では、負担はすなわち社会に貢献している、褒め称えられるべきことと捉えてもらうことも可能ではないかと思っているのですが。少し異なる部分もありますが、アメリカでは成功した人たちは、その利益で寄付して社会貢献することが一つのステータスとしてとらえられている面があると思いますが、日本ではそこまでの雰囲気ではないと思います。税と寄付で違う面もありますが、日本でも寄付や納税による社会貢献が素直に評価される社会になったらまた違うのかなと思います。伊沢拓司さん 寄付などのお金を通じた社会貢献は確かに真正面から評価されない部分があるかもしれません。寄付みたいに良いことをしたら褒める文化が必要だと思いますし、個人的には「社会に貢献すること」より「褒められること」のほうがモチベーションになりそうです。お金を稼ぎ、使うことへの意識を変革することが、今求められていると感じています。今広報すべきは情報より、「税も含めた社会貢献は褒められるべき」という意見かもしれません。反発あるでしょうけど(笑)。青木官房長 伊沢さんは、地域に行って学校で講演など活動されているという話をされていました。どういったモチベーションがあるのでしょうか。伊沢拓司さん 結局これもマインドを変えたい、成長志向になってほしいという願いがあって。僕のようなイレギュラーな進路の人間に触れる機会が少なそうな場所に行くことで、将来の選択肢を

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る