ファイナンス 2023年8月号 No.693
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温泉水が古くから湧き出しています。活火山の無い関西の地でなぜ温泉があるのか長らく不明でしたが、和歌山県南部は海のプレートが沈み込む地点にあり、地下にしみ込んだ雨水が、熊野カルデラの岩脈を伝って地上に湧き出していることが分かりました。古湯・名湯をほんの一部ですが、ご紹介します。日本三古湯の一つです。飛鳥時代から「牟婁の温湯」で知られ、日本書紀にも記載があり、斉明天皇をはじめ多くの宮人も来訪しました。外湯の中でも「崎の湯」は、海岸にある露天風呂で眺望抜群。白浜温泉のシンボル的存在です。日本三美人の湯の一つです。平安時代に弘法大師が難陀龍王の夢のお告げによって開いたと伝えられ、ナトリウム炭酸水素塩泉の湯は、一度入れば肌がツルツル、しっとりとします。江戸時代には、初代紀州藩主徳川頼宣が上御殿・下御殿を作らせ、温泉を堪能しました。熊野本宮温泉郷にある湯の峰温泉は、熊野詣の旅人が旅の疲れを癒し、また、湯垢離を行い熊野本宮大社へ参拝する前の禊とされていました。日によってお湯の色が7回変化することから「七色の湯」とも呼ばれる「つぼ湯」は、熊野古道の一部として世界遺産に登録されました。世界でも珍しい、入浴できる世界遺産として広く知られています。「川湯温泉」も熊野本宮温泉郷にあります。川底から73度の温泉が湧き出てきますので、川の水で温度源泉掛け流し温泉熊野には400を超える源泉があり、いずれも多量のを調整しながら、マイ露天風呂を作ることができます。冬になると、川の一部をせき止めて作られる巨大な露天風呂「仙人風呂」でも有名です。また、町内には、関西屈指の美しいビーチ「白良浜海水浴場」があります。総延長620mの白砂が続くビーチは、ハワイの「ワイキキビーチ」の姉妹浜です。江戸時代、初代紀州藩主「徳川頼宣」の付家老「安藤直次」が、やせ地を利用した梅の栽培を奨励し、田辺市とその周辺地域は日本一の梅の産地を形成しています。毎年梅の花が咲く頃には、標高300mの眼下に鉢状の梅畑と里山を望むことができる「紀州石神田辺梅林」が開園します。なお、梅とミツバチ、梅林・薪炭林が相互に関係し合う「みなべ・田辺の梅システム」は、平成27年に世界農業遺産に認定されました。果肉が厚く柔らかい「南高梅」が盛んに栽培されている田辺では、梅加工業やその関連業が集積しており、GI指定を受けた「和歌山梅酒」も多く作られています。田辺の炭問屋「備中屋長左衛門」は、火力が強く、長く燃える「紀州備長炭」を開発し、江戸などに卸しました。その評価は広く世に知れわたったのですが、パンダ白浜町には、動物園、水族館、遊園地が一つに集まったテーマパーク、「アドベンチャーワールド」があります。令和5年2月までは国内最多の7頭のパンダが暮らしていましたが、残念ながら3頭は中国に返還され、現在はのびのびと元気に暮らす4頭のパンダをじっくりと堪能することができます。産業・農業 72 ファイナンス 2023 Aug.〔白浜温泉〕〔龍神温泉〕〔湯の峰温泉〕〔川湯温泉〕〔日本一の梅の里〕〔紀州備長炭発祥の地〕

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