PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 22ファイナンス 2023 Aug. 63*1) 途上国等への優れた脱炭素技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本の温室効果ガス排出削減目標の達成に活用する制度。よって事情も異なりますので、“one-fits-all”の方策はありませんが、今後益々マクロ経済政策の舵取りが難しくなる中で、財政政策と金融政策が整合性をもって効果的に運用されるよう、各国に知恵を絞ってもらいたいと思っています。―セッション2−1は気候変動対策のデザインの仕方やこの分野での国際協力推進の方法について議論するものでしたが、IMFのお立場から、日本のこの分野での取組についてどのようにご覧になっていますか?気候変動対策は大きく分けてMitigation policy(緩和策)とAdaptation Policy(適応策)に分かれます。Mitigationについては、Carbon Pricingが最も効果が高いとみなされがちですが、それだけではなく、再生可能エネルギーへの転換を促す補助金やセクター毎の課徴金的な仕組みを組み合わせていくことも効果的です。Adaptationはインフラ投資が中心になりますが、その必要規模をどう推計するかやどうファイナンスするかは各国の課題です。日本も多角的な取組をしていると考えています。特に開発途上国に対する支援を行う仕組みであるJCM(Joint Crediting Mechanism)*1のような取組は非常に斬新ですし、先進国としては望ましいアプローチだと思います。カリフォルニア大学サンタクルーズ校のヘール教授が示していましたが、日本もストックベースでは温室効果ガスを多く排出している国の一つなので、国際協力を主導していくことが期待されます。―ラウンドテーブル・ディスカッション(セッション1−2とセッション2−2)では、前者は日本・タイ・ベトナム、後者は日本・フィリピン・バングラデシュ(及びregional experience)のプレゼンがありましたが、これらの国々を取り上げた意図や、実際にプレゼンを聞いてみてのご感想を教えてください。セッション1-2はポストコロナの財政運営、セッション2-2は気候変動政策について、IMFから見て、アジア域内で先進的な取組をしている国に経験談を共有してもらい、各国当局者の参考にしてもらえればと考えました。特にセッション2-2はよい組み合わせで、気候変動対策をしっかり進めていることで有名なフィリピンとバングラデシュ、さらには国連開発計画でアジア地域全体をカバーしているアサド・マケン氏にもプレゼンしてもらいました。例えばフィリピンはClimate budgetingという仕組みを導入しています。予算編成にあたり、気候変動関係の支出を省庁横断でタグ付けし、それらについて整合性を保つように内容検討、予算書類準備、執行といったサイクルを回しているとのことでした。バングラデシュも、2040年までのロードマップを策定し、経済政策や予算編成に組み込んでいます。具体的には気候変動要素を予算分類システムに組み込むことで、気候変動関係の支出の追跡が容易になり、透明性向上や効率性の分析が可能になったとのことです。マケン氏は、域内各国の気候変動関係の改革、特に気候変動ファイナンスに向けた具体的な動きを紹介しつつ、予算編成とPFM(公的財政管理)強化を連動させていく重要性を訴えました。今後、気候変動と予算編成をどう連動させるかは各国の課題ですが、Trailblazers(先駆者)を紹介したことで、具体的にどういう改革が必要となるかのイメージを持てたのではないかと思っています。3.振り返り、今後に向けて―片山さんが今のポストに就かれてからは初めての対面開催となりましたが、振り返ってみていかがでしょうか?
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