ファイナンス 2023年8月号 No.693
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0日本米国日本米国日本米国日本米国米国日本守り業務量の比率0100 攻めコラム 経済トレンド 110(出所)BNPパリバ証券「イメージ先行のリスキリングとジョブ型雇用への誤解-「三位一体の労働市場改革」をどう機能させるか」、日本経済新聞「「場当たり」「関わりたくない」…DX推進の落とし穴-日本のDX、組織の課題まとめ読み」、IPA「DX白書2022」、野村総合研究所「日本企業のIT活用とデジタル化-IT活用実態調査の結果から」***1.26***0.44***1.21(注3)***は1%水準で有意、破線は有意ではないことを示す。(出所)令和2年度年次経済財政報告、独立行政法人経済産業研究所「生成AIと雇用・リスキリング」、PwCJapanグループ「2021年AI予測」・日本の生産年齢人口の縮小に伴い、深刻化する人手不足解決策の一つは、ITデジタル技術を導入することである。日本は、安い労働力に頼り、十分な省力化投資を進めてこなかった。2010年代以降、製造現場ロボティクスなどによる自動化が進展し、オフィスにおいても定型的な業務については、ソフトウェアやアルゴリズムで自動化が相当に進んだ(図表10)。・現在も日本のIT投資は「ビジネスの維持」が大半を占め、計画的な改善を行い成果が上がっている企業の割合は30%にも満たない(図表11、12)。・DXの取り組みとして「デジタル化」「生産性の向上」については成果があがっているものの、顧客価値創出やビジネスモデルの変革といったトランスフォーメーションのレベルの成果創出は不十分である(図表13)。日本企業によるDXの取り組みは米国企業と比べて遅れており、その導入目的において日本は業務効率化、米国は顧客価値の向上という違いがある。・内閣府によればIT投資は労働生産性の向上に有意にプラスの効果がある(図表14)一方で、現場やバックオフィスの省力化を意図したIT投資は、現状では既存の設備や労働力の置き換わりにとどまっていると指摘されている。・IT投資は最新技術を導入することで効率化や革新的サービスの提供に繋がり、競争力の維持にも貢献することが期待される。また労働力不足の解消も日本の喫緊の課題である。IT投資による自動化、ロボット化は人手不足を補うことができる(図表15)。今後はこうして削減した労働力をより効率的に活用することが求められる。・IT投資はDXに欠かせない。デジタル化により業務プロセスの効率化や情報提供の一元管理が可能になる。意思決定の迅速化や顧客サービスの向上など企業の競争力を高めることができるが、現在こうした意思決定プロセスの迅速化は日本ではあまり浸透していない(図表16)。・IT投資は新たなビジネスの創出の機会でもある。デジタルプラットフォームを活用したサービスの他AI技術を利用したサービスの提供など新たなビジネスが日々誕生している。こうした先端技術を活用できるIT人材を確保することはIT投資の一つである。ITの進展により労働力の代替が行われることもあるが、同時にIT投資は経済の成長を促進し、今後新たなビジネスの創出、雇用機会をも生み出す可能性がある。1960~1970年代電算部が管理米IBMが64年に発表した大型汎用機「システム360」をきっかけにコンピューター活用が広がる80年代情報システム部が統括パソコン導入が始まる。戦略情報システムが流行したが、長続きせず、数年で下火に90年代情報子会社に分離バブル崩壊でリストラ対象に。大手システム会社への依存が強まる。その後、統合基幹業務システム導入が進む2000年代ベンダーロックイン独自仕様ERPの改修費用がかさみ、経営の重荷に10年代~DXに遅れデジタル人材が不足。CIOやDX専門部署を置くなど巻き返しの動きが出てきたが、名ばかりCIOも(%pt)1.51.10.5全業種ソフトウェア装備率製造業(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。機械設備装備率(注1)内閣府「国民経済計算年次推計」により作成。(注2)1994年~2018 年における、主要業種の生産性について、下記の固定効果モデルを推計。log(マンアワー当たり実質労働生産性)=C+α・log(マンアワー当たり実質ソフトウェア装備率)+β・log(マンアワー当たり実質機械設備装備率)+u(注1)ビジネスの変革…商品・サービスの品質や提供スピードの向上などへの投資、ビジネスの維持…法制度変更への対応、維持管理・運用、業務量増加に伴う増強、セキュリティ向上などにかかるコストを指す。(注2)日本(n=305)(図表12)支出割合の改善に関わる計画と管理(%)***0.13(図表11)IT費用の支出割合(2021年度実績)(%)(図表15)IT投資により期待される 39.9省力化投資・自動化投資1000.06非製造業ビジネスの変革ビジネスの維持計画的な改善を行ない、成果があがっている計画的な改善を行っているが、成果を得るには至っていない計画的な改善を行っていない(注1)支出割合の区分(ビジネスの変革/ビジネスの維持、もしくはそれに準じた区分)について適切な割合で振り分けるような改善を行なっているか(注2)日本(n=338)80402031.26068.827.232.8機械が担う業務肉体労働を代替人海戦術人間を投入100時間の推移情報通信が担う業務頭脳労働を代替(%)より効率的な業務運営と生産性の向上アナログ・物理データのデジタル化業務効率化による生産性の向上新規製品・サービスの創出顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革すでに十分な成果が出ている今後の成果が見込まれている取り組んでいない(注1)日本(n=218)、米国(n=268)(注2)集計対象は、DX取組の成果において「成果が出ている」と回答した企業。コスト削減の実現リスク低減製品とサービスの革新よい良い顧客体験の創出売上高の増加社内の意思決定の改善従業員のトレーニングとスキルアップの強化人材の採用と定着の向上(図表13)DXの取組内容と成果100(図表16)AI投資からリターンを得ている 企業の割合00すでにある程度の成果が出ているまだ見通しは分からない50(%)5050100(%)ファイナンス 2023 Aug. 47(図表10)日本企業の情報システム投資の歴史(図表14)マンアワー当たりのIT資本装備率が生産性に与える影響労働力の代替効果日本のデジタル化の進展と米国との違いデジタル人材確保に向けた提言

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