ファイナンス 2023年8月号 No.693
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*7) 信用保険法においては、信用保証協会が行った保証メニューの内容に沿ってどの縦のメニューが優先して成立するかが定められている。ただし、独立の条文(優先規定等を一括して示す条文)を立てているわけではない。慨して言えば、どういう保証を信用保証協会が行った場合であれば、幾らまでは、どの縦のメニューが成立するということが、その各縦のメニューの条文(信用保険法第3条から第3条の11)ごとに定められている。したがって、平易な言い方をすれば、信用保証協会が任意の保険メニューを選べるわけではなく、信用保証協会が行った保証メニューの内容に沿って自動成立するという立て付けなのである。では、対する信用保険法はどのような立て付けとなっているか。この構造が一見して複雑なのは、基本的な保険メニューの構造を縦のメニューとするなら、その縦のメニューに横断的に適用される特例メニュー(横のメニュー)が存在するという点に起因しているように思われる。そこでここでは、細かな部分は意図的に省略しつつ、先に縦のメニューについて説明し、その上で横のメニューについて述べることとしたい。縦のメニューであるが、その内容は、信用保険法第まず第3条から第3条の11において、保証メニューに対して適用できる保険メニューが羅列されており、信用保証協会が行った保証メニューに適用する保険は、この中から成立する*7ということになる。では、その保険内容はどのようになっているのか。最も基本的な「普通保険」を規定する同法第3条を例にすると、その第1項で、保険として引き受けられる対象や上限金額を定めつつ、同条第2項で保証割合に対する保険金額(填補率)は70%である旨を規定している。以下、第3条の11まで、基本的な法令構造は同じであるが、それぞれ政策目的等に沿って、その対象や上限金額、保険金額(填補率)が規定されている、というわけである。次に第4条にて、信用保証協会から公庫保険に支払われる保険料が規定される。第4条は、「保険料の額は、保険金額に年百分の三以内において政令で定める率を乗じて得た額とする」とされているため、この時点で保険料率には3%という上限が定められている。なお、具体的な保険料率は、上記の通り政令委任されており、中小企業信用保険法施行令(昭和25年政令第350号。以下「信用保険令」という。)においては、第2条にて、具体的な保険料率が定められている。そして、続く第5条は、実際に公庫保険から信用保証協会に対して支払われる保険金の算定方法が定められている。そのため、上記第3条から第3条の11において定められている、各保険メニューの保険金額(填補率)とこの条はリンクするという構造となっている。このように、第3条から第5条だけをまず読み込めば、信用保証協会が行う保証メニューに対し、どういった保険メニューを適用するかという極めてシンプルな法令構造であることがおわかりいただけるのではないかと思う。○信用保険法(抄)【基本的な保険メニュー:縦のメニュー】(普通保険)第三条 株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)は、事業年度の半期ごとに、信用保証協会を相手方として、当該信用保証協会が中小企業者の銀行、信用金庫、信用協同組合その他の政令で定める金融機関…からの借入れ…による債務の保証…をすることにより、中小企業者一人についての保険価額の合計額が二億円(その中小企業者が中小企業等協同組合、協業組合、商工組合、商工組合連合会、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会又は酒類業組合であるときは、四億円)を超えることができない保険(以下「普通保険」という。)について、借入金の額のうち保証をした額…の総額が一定の金額に達するまで、その保証につき、公庫と当該信用保証協会との間に保険関係が成立する旨を定める契約を締結することができる。2 前項の保険関係においては、保険価額に百分の七十を乗じて得た金額を保険金額とする。3 第一項の保険関係においては、借入金の額のうち保証をした額を保険価額とし、中小企業者に代わつてする借入金の弁済(手形の割引の場 36 ファイナンス 2023 Aug.(基本的な保険メニュー:縦のメニュー)3条から第5条に集約されている。(2)信用保険法

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