ファイナンス 2023年8月号 No.693
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ファイナンス 2023 Aug. 33*4) https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm*5) SN保証4号の場合、3ヶ月ごとに調査が行われ、必要に応じて延長されるという運用であり、SN保証5号の場合、四半期ごとに調査が行われ、不況業種が指定されるという運用となっている。したがって、その必要があれば指定が延長されるため、絶対的な終了時期というものは、法令上は定められていない。信用補完制度の解説法令面では、信用保険法第2条第6項等が、この保証メニュー導入にあたり追加されている。結果としてSN保証と異なり、保証メニューと保険メニューが対になっており、最も法令上の立て付け面では理解しやすい保証メニューではないかと思われる。具体的な保証内容は、民間金融機関が行った融資額の100%を保証する。なお、参考までに述べておくと、上記融資は、下記の両条件に当てはまることについて、市区町村長の認定を受けた者が対象となる*4。(イ)金融取引に支障を来しており、金融取引の正常化を図るために資金調達を必要としている。(ロ)認定案件(上記の経済産業大臣が認める場合)に起因して、原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる。そして、代位弁済を行った場合には公庫保険よりその保証額の90%が填補される仕組みとなっている。では、危機関連保証は、SN保証4号やSN保証5号とほぼ同じ制度なのか(より支援レベルが拡充されているのが違う程度なのか)というとそうではなく、実施期間という点で明白な違いがある。具体的には、SN保証4号やSN保証5号が「法令上の明白な終了期限が無い*5」のに対し、当該制度の趣旨に鑑みれば、危機の去った段階で速やかに終了しなければ、市場を歪めることにもなりかねないため、その期間は原則1年以内(更に延長する場合も最大1年であるため、最長2年以内)と、予め期限を区切って実施することが法定されている。なお、この危機関連保証が初めて発動されたのが、今般の新型コロナ対策であった。SN保証4号及びSN保証5号と共に、第1回で述べた民間ゼロゼロ融資の実施等を可能とするベースとなる制度としても活用されてきたところ、上記の期限を満了したため、現在はSN保証4号など、従来からの保証メニューを活用する形で、新型コロナ対策が続けられている。(まとめ)今般の新型コロナ対策でも活用された、SN保証4号及びSN保証5号並びに危機関連保証の概要は、以上のとおりである。なお、SN保証は全部で8つの保証メニューの総称であるところ、今般取り上げた保証メニュー以外を含めたその全体像は、次の図表2を参考としていただきたい。そしてここまで述べてきたように、こういった保証メニューが、実際の現場では実務として使われる用語であり、制度であるため、信用保証制度がどういうものかということを解するという点だけであれば、この第2章の内容である程度足りるであろう。しかしながら、本稿を執筆する際の話にも繋がるものであるが、実際こうした保証メニューを安定的に実施するためには、信用保険制度によるバックファイナンスがなければならないわけで、それこそ、第3章が示す内容なのである。では、実際に信用保証制度が稼働するにあたってのバックファイナンスは、どういった構造になっているのか。今回は、制度・法令の面から見るとして、その稼働根拠について、第3章にて述べていきたい。では、こうした経緯・制度変遷を経て現在に至る日本の信用補完制度であるが、具体的にどのような仕組みで動いているのか。この点について、ここでは、その制度の骨格たる法令上の枠組みについて述べていきたい。ここまで繰り返し述べてきたとおり、日本の信用補完制度は、民間金融機関による融資を「保証」する信用保証協会と、その信用保証協会が行った「保証」を包括的に「保険」する公庫保険から成り立っている。このうち、信用保証協会については、信用保証協会法(昭和28年法律第196号)がその設立根拠となっており、内閣総理大臣(金融庁)及び経済産業大臣3. 信用補完制度の仕組み〜法令上の立て付け〜

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