ファイナンス 2023年8月号 No.693
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1日時点のものとした。*1) 実際の発動事例としては、平成8年の腸管出血性大腸菌禍(O-157)、平成9年のナホトカ号流出油災害や平成13年の有明海の海苔の不作がある。なお、意見に亘る部分は筆者個人の私的見解であり、政府や財務省の公式見解ではない。また、ありうべき誤りは、全て執筆者個人に帰属するものである。大臣官房信用機構課地震再保険係長(前 政策金融課政策金融第2係長) 中川 忠明信用補完制度は、昭和33年の成立以来、その基本的スキームを維持してきているところ、実際に制度を利用されている方々や金融機関職員の方々等の立場からすると、それなりに変化してきている部分があるという印象があるかもしれない。実際のところ、信用補完制度の中身にあたる保証メニューは、政策的必要性等を反映し、柔軟に、拡充・見直しが行われてきたわけである。では、具体的にどのような保証メニューがあるのかと言い始めると、信用保証制度は先述の通り、地方公共団体レベルから積み上げられてきた制度であるし、実際に各地方公共団体において制度融資の設計等も行われるため、一律に説明することは難しい。また、株式会社日本政策金融公庫の信用保険事業(以下「公庫保険」という。)側から説明しようとしても、それはそれで一般的な保証メニューの理解には資さないであろう。その理由は、後の第3章を読んでいただければ最も端的なのであるが、あくまで公庫保険側からは、保証メニューをバックファイナンスするための保険メニューであるから、必ずしも世間一般に知られている保証メニューとリンクせず、理解しようとすればするほど初見では混乱すると思われるからである。そこでここでは、利用者側の目線に立ちつつ、信用保険制度との連結もある程度明瞭であって、かつ最も実務的にも活用されるであろう3つの保証メニュー(セーフティネット(以下「SN」という。)保証4号及びSN保証5号並びに危機関連保証)について、その内容を簡単に述べておくこととしたい。単純に信用補完制度としてどういう制度が使えるのか、という観点であればこの第2章を解せば足りるであろう。その上で実際どうやってこの制度を稼働させているのか、という点についてご興味のある方は、第3章へと進んでいただければ幸いである。SN保証4号は、SN保証3号と共に、昭和55年当時、東北地方の冷夏から北陸地方の豪雪など、地域的・突発的な自然災害等により、地域の中小企業が安定的な経営を行うことが困難になっていることを背景として整備されたものである。そして、SN保証3号が、事故等により影響を受けた中小企業を対象とするため、中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号。以下「信用保険法」という。)第2条第5項第3号にて「特定の業種に属する事業」に係る規定とされている*1のに対し、SN保証4号は自然災害等により影響を受けた中小企業を対象とするため、業種指定は行わず、地域指定という仕組みになっている。また、自然災害等に起因して発動するため、主務省(条文上でいう「主務大臣」であるが、 30 ファイナンス 2023 Aug.1.はじめに第1回及び第2回までで、概ねの制度創設の背景・流れについては述べさせていただいた。では、実際に現在の信用補完制度は、どのようにして運用されているのか。それを理解するためには、法令・制度と予算の両面から理解する必要があるところ、今回は主に、法令・制度の面から述べることとしたい。(注)  引用している条文等は、特段断りがない限り、令和5年4月2. 信用補完制度の活用〜代表的な保証メニュー〜(1)SN保証4号信用補完制度の解説~主に信用保険制度の観点から~(Ⅲ)

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