ファイナンス 2023年8月号 No.693
24/80

「その分野でComparative advantageがウクライナにあるとは思っていない」との回答。このComparative advantageというのは、日本語で言うと「比較優位」なのだろうが、極めて切れるエイゴである。是非使ってみて欲しい。いわゆる「勝てる」分野であることを示すために使う。貴方の、Comparative advantageは、何ですか?3.私のハートは、イエロー・ブルー今、私の仕事の時間の半分以上をウクライナに割いている。これはもともとの本業では無い。本業は、日本企業の海外ビジネス投資を促進することであり、ウクライナの場合、本格的なビジネス投資の検討はまだハードルが高いと考える企業が大半である。聴衆もウクライナ支援一色であり、厳しい質問も飛ぶ。あるセッションのパネリストとして参加したドイツの製薬企業は、ロシアからは撤退しているのかと聞かれ、まだ撤退していないが、事業は縮小していると答えた。それに対し聴衆から非難めいた意見が出る。それに対しその企業代表は、自らの方針を臆することなく述べる。リスクを取るとは、こういうことも含むのだ、と思う。こういう質問が来ると分かっていながら、あえて参加し、自らのポジションを明確にし、かえってウクライナへの支援の姿勢を印象付けることに成功している。こういうことをエイゴでしっかり説明できる企業は強い。翻って、日本の企業は、どうだろう。他方で、戦闘状態の終結まで手をこまねいていて良いものか。ウクライナの現状を見るに、日本の技術を使って、今、役に立てることは無いものか。そう思って、リモート技術を使った農家への助言による農作物の生産性向上、遠隔地からの専門医療の提供、ポータブル浄水器の提供などの可能性を検討している。その一環として、ウクライナ政府の人々に様々な技術を直接説明して、有用性を検討してもらおうというアウトリーチ活動を続けている。本年4月のある日、ウクライナ農業省のDeputy MinisterのD氏が訪日中であり、数日後に横浜にあるリモート農業の試験農地を訪問するとの情報を得た。瞬時にしてその農地に行ってD氏と面談することを決意し、当日横浜に向かう。その日本企業のリモート技術を活用すれば、農地に据え付けたセンサーが気温や地中水分を計測しAIに送り、AIが最適な収穫日や農薬散布時期を助言し、収穫が2-6割増える。そういう説明を聞いてD氏は、視察中に既に「この技術をウクライナでテストしたい」と言った。期待通りの展開に、私はD氏をビニールハウスに誘い、パイプ椅子での面談を始めた。この技術の事業者であるS社はウクライナでの実証事業を行う用意があり、日本政府も支援する用意があることを告げ、今後の段取りについての当方の考えを述べた。唐突な申入れだったが、D氏は真摯に対応し、今後話を進めて行くことにつきビニールハウスで合意に達した。 20 ファイナンス 2023 Aug.(1)ヨコハマの、ビニールハウス[コラム]Comparative advantage本年7月の出張でワシントンの世界銀行に行った。そこでウクライナでの水素生産の将来性の話になり、当方から「グリーン水素の生産には再エネ電力が必要だが、今はウクライナでの太陽光・風力の活用は■少、他方で電力の半分は原発に依存。旧ソ連製の原発に依存したグリーン水素というのは将来性の点からどうだろうか?」と世銀のスタッフに聞いたところ、

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る