けるためだけにタクシーで空港に向かう。本当は数時間前に飛行機で到着する筈だった、その空港に。(下の写真は空港の検査施設)本番の会議は翌日だったが、その日の17時から主催者との事前打ち合わせが入っていた。主催者のカナダ人にはフランクフルトの空港から電話やメールをし、全ての状況を告げてあった。随分余裕を持ってスケジュールを組んでいたが、今やノリシロは完全にゼロである。幸い、PCR検査場では手続き3分、検査は10秒で終わった。検査結果は今晩中にメールで来る。市内の打ち合わせ場所(宿泊先のホテル)に行くのに良い地下鉄を見つけてそれに乗った。駅から走り、打ち合わせ会場に現れたのは、16:59だった。主催者が私の顔を見て、両手を上げて、言った。「You are just like James Bond!」人生でジェームス・ボンドのようだと言われるのは初めてだ。悪い気はしない。フランクフルトからの平坦では無い道のりを全て分かっていた主催者からの、最大限の賛辞だった。* * * * * *ところが試練は終わらない。翌日の会議後帰途につき、再びミュンヘン空港に向かい、恐る恐る確認すると、幸いフランクフルト行きの飛行機は飛ぶと言うのでゲートに向かう。しかし・・・・。搭乗時間になっても、ゲートに、客はいるのにドイツのL航空のスタッフがいない。まさか。。。すると出発時間直前にどたばたと走って2人のスタッフが現れ、システムを立ち上げるや鬼神のような速さで25分で搭乗案内まで持って行く。離陸後に機長から「搭乗時間になってもスタッフが来なかったことについてお詫びします」との異例のアナウンスがあった。次はフランクフルトでトランジット。まだ嫌な予感がする。30時間前にここで起こった事がどうしても頭を離れない。しかし次に乗る飛行機は日本の航空会社だから大丈夫ではないかと、ふわふわした気持ちのままゲートに行くと、ゲートにスタッフはいた。しかし「ケータリングの搬入に時間がかかっております」とのアナウンスがあり、搭乗は45分遅れた。そして搭乗しドアが閉まっても飛行機が全然動かない。搭乗後30分が過ぎた時、異例だが機長の告白があった。「人出不足によりお客様の大事なお荷物の機中への搬入に時間がかかっています。大変申し訳ありません。」ケータリングの次は荷物か。結局ゲート前で50分待たされた後、ようやく動き出した。ドイツの空港では、地上乗務員も、荷物運搬作業員も、手配出来ないのか。コロナ禍は、空の旅を難しくする。そして、ジェームス・ボンドを作るのだ。2022年12月に、ミュンヘンと同じ主催者のグローバル投資家会合に参加するため、ベルギーのブリュッセルに出張した。ミュンヘンは1人だったが、今回は私のスタッフのYさんという女性が一緒である。もはやコロナ禍は終わり、空の旅に波乱は無いかと思われた。しかし。会議終了の翌日、ブリュッセルから次の目的地のロンドン行きの飛行機に乗るため空港に行き、チェックインを済ませゲートに行こうとすると、途中の廊下が封鎖されており、その向こうで大声が上がっている。何かのグループが騒乱を起こし、警官隊がゲートへの通路のアクセスを止めたのだ。そのうちに乗客が次々に押し寄せ、封鎖線の前が人で埋まる。搭乗時間が迫る客が警官の一人に何とかせよと大声をあげると、警官がその乗客を排除しようとする。するとその乗客は、「排除するのは俺じゃない。あの騒ぎを起こしている連中だろう!」と言い、拍手が上がる。最悪である。そして事態は動く。騒乱者の排除を手短に諦めた空港管理者は、■れる乗客を誘導し、重い荷物を抱えたままの客を非常階段経由で地上に下ろし、建物の外に用意されたシャトルバスに乗せ、ターミナルの遠方ゲートまで騒乱地帯を■回して乗客を運ぼうという算段を組む。言われるがままに荷物抱えて非常階段を降りるとき、将棋倒しの恐怖を感じる。これは女性や子 16 ファイナンス 2023 Aug.(2)わ、私に構わず先に行ってください。
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