ファイナンス 2023年7月号 No.692
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PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 21 [プロフィール]2008年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)において博士号(経済学)を取得。その後、日本政策投資銀行設備投資研究所副主任研究員、ハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所研究員、日本大学経済学部准教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、一橋大学大学院経営管理研究科教授を経て2023年4月より早稲田大学商学部教授(現職)。主に企業ダイナミクスを研究。2022年4月より税大客員教授。[聞き手]渡邊 葵伊(写真右)財務総研総務研究部研究企画係2021年7月より財務省内での研修の運営や、外部有識者を招いた講演会等の業務に従事している。2023年1月から税大研究部に併任。ファイナンス 2023 Jul. 67うとしたら、どのようなデータを使うと分析に有益だと思われますか。國枝:現在提供されている申告所得税、法人税、相続税の他にも、消費税等の他税目のデータが利用できれば、様々な研究ができると思います。また、源泉分離課税の対象となっている所得や2,000万円以下の所得の給与所得者のデータで申告がないものは、現在利用している申告所得税データには含まれていません。マイナンバー制度の普及後には、マイナンバー等を用いてそれらのデータのマッチングを行い、納税者の所得の全体像が明らかになれば、税務データの学術的な価値も更に上がることになると思われます。稲葉:最後に、税務データを用いた研究が行われていく上で財務省及び国税庁に期待することを教えてください。國枝:税務データ利用の必要性を長らく主張してきただけに、まず税務データの学術利用を認めていただいたことに感謝したいです。また、税大職員にも、デー夕整備や研究環境の整備に献身的に御協力いただいており、深く感謝いたします。税務データは、納税者のプライバシー保護もきわめて重要なので、税務データの利用は、税大の共同研究室に設置されたPCでしか許されていないなど、厳しい情報管理下にあります。プライバシー保護の観点からは、致し方ないと思う一方、中期的には、複数の利(2)宮川 大介 教授(写真左)用できる場所を設けることが望ましいと思います。今後とも、学術利用の対象となる税目の拡大や、データを利用できる場所の拡大など、税務データの学術利用を推進していただくことを期待しています。渡邊:宮川先生は、法人税の個票データを利用した共同研究に参画されていますが、実際に分析をしてみて、感じたことや分かったことを教えてください。宮川:これまで私自身の研究で様々な政府統計の個票データや民間の商用データを使用してきましたが、データの正確性や標本の偏りの有無は分析の重要な前提となります。法人税の個票データは、その性質から正確性

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