結論:期待される日本人 仕事の仕方・業務環境について 62 ファイナンス 2023 Jul.しているイシューだったりするので、入っていきやすいからである。むしろ、議題のない、spontaneousな会話が要求されるランチや飲み会などの席のほうが、よっぽど難易度は高いのである。後で思い返して、あ、自分のあの時の英語は変だったな、と思うのはだいたい飲み会での席での発言だったりする。酔っぱらっていたからという可能性もあると思う。いずれにせよ、こういった機会において別に酒を飲む必要はない。訓練という意味ではそういうような自分の仲の良い人たちと囲める社交の場であればよいのである。関係性のある人なら、たとえ英語がダメでも性格と文脈で理解してくれるし、そういう友人・同僚に対して自分からどんどん発信しようとすることで、自然と自分が自分でいられるようなコミュニケーション能力が構築できるのである。あとは日本語でもそうだが、はったりでも自信をもって、相手の目をみながら、という通常テクが相当有効である。自分は特に英語での発言のときには下を見ず、例え目上だろうが、いやむしろ目上だったら尚更、まっすぐ目を見て話すようにしている。このようなことを社交の場でできるようになれば、公式な会議の場でより説得的に自分の意見を言えるような自信がつく。ここまでは、私のような典型的ステレオタイプの日本人のコミュニケーションの点での改善点、というような視点で書いてきたが、最後は日本人の特質を生かす重要性についても書いてみたい。冒頭でも若干触れたように、日本人の真面目さ、几帳面さ、というのも日本人を形容するよくある性質であるが、これらはかなり評価が高い。これまでの海外勤務では、多くの海外の同僚も有名な学校を卒業し、素晴らしい専門的キャリアを積んでこられら方が多く、尊敬できる方にもたくさん会えた。他方で、仕事の中身(サブ)ではなく、仕事の進め方(ロジ)については圧倒的に日本人に分がある。なぜなら、日本人はきくばりをするからである。よく言われるように、日本文化は他者との共存、自分本位を排除することを美徳とし、それを実践しようとする。それは仕事に如実に表れるのである。いくつか例を挙げてみる。1つ目は、何か一つのフォーマットに皆で各自自分の担当イシューについてインプットをしあうような仕事はどこの業界でもあると思うが、そういった場合、日本人は、デフォルトのフォーマットの大きさ、自分の業務の他者と比較しての重要性、他の人がどれくらいの量を記載しているか、など、とりあえず様々な要素を勘案して、取りまとめる方が苦労のないようにインプットを慎ましく提供する。他方、外国人は、もちろん全員ではないが、多くの人は自分の書きたいことを書こうとする。勝手に他者の作成したフォーマットの様式を自分の都合の良いように変えたりもする。他の例は仕事の締め切りにも表れる。とにかく多くの外国人にとっては、締め切りは目安なのである。締め切り超えて数回のリマインドしてやっと回答、ということがざらにある。日本人は締め切りは“Dead”lineという認識が強く、それに間に合わせることが重要と考える。メールの返信にしてもそうである。自分は認識していないが、よく返信が早いとお褒めの言葉を頂く。本人的には、時間があるときに返信しているし、自分の部署はミーティングも多く秒速で返信をしているつもりはないが、そういう印象らしい。さらに、日本人は行間を読むのが上手である。何かアクションをする前に、相手が何を望んでいるのかを、把握しようと努力するのである。そういったことから、日本人が他人を思いやり、あたり前にしていることはかなり重宝され、結果的にそれがよい業務成績にも貢献することになる。これまで述べてきたように、典型的な日本人である自分を含め、我々日本人には他国の人には代えがたい、比較優位があるのである。慎ましく、勤勉で、実直な性格は、必ず評価されるし、そうあるべきである。そのような側面は、コミュニケーション能力を高めることで更にプレゼンスを高めることができるのである。あの人はおとなしくて何考えているかわからない、では勿体ないのである。これを見ている若者の中には、海外に行くことに二の足を踏んでいる人もいるかもしれない。自分はこれらの機会を持たせてもらえ、本当に良い経験をさせて
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