FOREIGNFOREIGNWATCHERWATCHERAMRO CMIMスペシャリスト 松谷 真人 はじめに 60 ファイナンス 2023 Jul.【本稿において、外国人、日本人との区別や、ステレオタイプな性格描写などがあるがそれらはあくまでわかりやすさを念頭に置き、敢えて使用している表現であり政治的志向その他偏見を含意しているものでは一切ないことをまずは申し上げたい】現在在シンガポールに所在する国際機関であるASEAN+3 Marcoeconomic Research Office(AMRO)に勤務している。AMROは、2011年にシンガポールにまずは現地法人として設立し、2016年に国際機関のなった新しい組織である。AMROは、通貨危機を防止する観点からASEAN各国及び日中韓の経済状況を常時モニターするとともに、万が一ASEAN+3各国が危機に陥った場合には加盟国間で外貨を融通し合うスワップ網であるチェンマイ・イニシアティブの実施を支援すること、それらに関連する技術支援を行うことなどを任務としている。自分が財務省の若手時代から設立に向け関与してきて、今実際そこで勤務できていることは本当に感慨深い。AMRO設立の経緯や業務内容など、言いたい/伝えたいことはたくさんあるが、それらついては敬愛する諸先輩方がファイナンスの昔の号で書かれているので、ここでは詳細は省かせて頂く(AMROの詳細にご関心の方はAMROホームページ:https://www.amro-asia.org/をご参照のこと)。今回この執筆の機会を頂き、では何について海外ウォッチャーとして書くべきか、と思った時、自分が過去のファイナンスで印象に残っている記事を思いだした。もちろん、海外で勤務されている同僚の業務内容について詳しく知ることも興味深かったが、それ以上に、他言語、他文化の中で生活する際のノウハウなどについてカジュアルに書かれている記事を関心を持って読んでいたことが印象に残っている。特にファイナンスの読者には、過去の自分と同じように海外勤務に関心のある後輩達も多くいるので、今回は特に彼らに向けて、日本人が海外で勤務する際のソフトテクニックのようなものを伝達できればよいなと思い、そういう緩い側面から寄稿させて頂こうと思う。とかく、国連などの国際機関が日本国内で議論される際、日本は各国際機関に対し資金的貢献などのハード面では世界有数の寄与国と言われる一方で、人的拠出などのソフト面がその資金寄与に伴わないとの批判がある。国際機関職員となるためには、基本的に関係する分野の修士号以上が求められるため、特に文系においては修士号への進学率が諸外国よりも低い日本は相対的に適格性のある人材が少ないという理由もあるかもしれない。一方で、留学を含む3度の海外赴任をさせて頂いた経験から、国際機関で働く日本人が相対的に他国に比べ低いことは、典型的には私のような、日本人が持つ奥ゆかしい性格を持つ人が多いからではないかと思う。そこで、日本人が国際機関で立派に生きていくため、専門知識を高め仕事に良いパフォーマンスを発揮する以外にどのようなことが重要かについて、(1)日本人の基本的パーソナリティ、(2)言語、(3)仕事の仕方・業務環境、から述べたい。 海外ウォッチャーコミュニケーションは力なり
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